脱炭素は、エネルギー自給のために

脱炭素をめぐる動きは、エネルギー覇権をめぐる大国間の争いだ、と理解した方が自然です。アメリカはシェール革命によって世界最大の石油産出国になり、原油を輸出するまでになりました。もはや中東の石油に依存する必要はありません。一方の日本・EU・中国・インドなどには石油は出ないので、アメリカの石油支配を受け入れざるを得ませんでした。

ところが近年、環境技術の向上によって、再生可能エネルギーのコストが低下しています。また、ITインフラの発達によって、広域を網羅する分散電力システムも可能になりそうです。もし再生エネルギーや原子力エネルギーで自国の必要を満たすことが出来れば、安全保障上、非常に有利になります。

考えてみれば、世界史はエネルギー資源を巡る争いの歴史です。フランスとドイツは、国境地帯のアルザスの石炭資源を巡って戦争を繰り返しました。日露戦争までは石炭エネルギーの時代でした。日本は石炭を自給できたので、独立した外交ができ、日露戦争を戦うこともできました。ところが第一次大戦を境に石油の時代になったので、石油が出ない日本は国際的に不利になりました。そして石油を巡ってアメリカと戦争までしました。

安全保障上もっとも重要なエネルギーという問題について、他国に依存しない体制を作れる可能性が見えてきたわけですから、各国の政治的指導者が、脱炭素を目指すのは、当然のことです。

EUはこうした理由から、その実現がそう簡単なことではないことを承知の上で、先頭を切って国際社会に脱炭素を呼びかけたわけです。このようなEUの提案に対して、日本・中国・インドなどが理解を示すようになってきた、というのが現状です。グレタさんのような過激な環境活動家は、このような世界の流れに乗って活動しています。

中国などは世界的な流れの中から利益を得ようとして、太陽光発電パネルの生産に注力しています。また、電気自動車産業を育成して日本のガソリン自動車産業を潰そうとしているのも、同じように国益を追求しているからです。さらに中国は自国が途上国であると主張して、先進国からCO2削減支援金を得ようともしています。

中国としては、CO2削減対策実現して、エネルギー自給が達成できればそれで良いし、失敗してもその過程で利益を得ようという両面作戦で自国の国益を追求しています。

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