これから日本の企業の技術が海外から狙われている、という話をします。6月25日に東芝の株主総会が開かれました。東芝が取締役にと考えていた11人の内2人が、外国の投資家の反対によって落選しました。いまのところそれ以上の動きはないのですが、この外国投資家は東芝の技術を海外に売り飛ばして儲けようと考えているのかもしれません。
これから東芝がここまでに至った経緯や海外の投資家の動きなどを説明していきます。
東芝は、重電部門・原子力発電部門・家電部門・半導体部門を持つ総合家電メーカーでしたが、経営能力がない経営者が続出したために、次々に経営上のミスを重ねました。
東芝は、1987年にココム違反事件を起こしました。当時は冷戦時代で、ソ連には武器製造に利用可能な製品を売ることは禁止されていました。ところが東芝の子会社は、ココム違反であることを承知していながら、ソ連に潜水艦のスクリューを製造する工作機械を輸出しました。この事件で、東芝は緊張感がない会社だということが、世間に明らかになりました。緊張感の欠如から粉飾決算をするようになり、これが常態化しました。
東芝は原子力発電部門を持っていましたが、さらにアメリカのウェスティングハウスという原発メーカーが売りに出たので、それを買いました。日立や三菱電機などのライバル企業と落札を競った結果、常識的な価格の3倍という高値で購入しました(7200億円)。
このウェスティングハウスがボロ会社だったのです。さらにその購入後に、かつて東芝が建設した福島原子力発電所の事故が起き、原子力発電事業が不振になりました。これを挽回すべくアメリカでの原子力発電所建設を受注しましたが、工期が遅れ巨額の損を出しました。アメリカの工事会社を買収して工事を完成させようとしましたが、この工事会社がまたとんでもない会社でした。結局、東芝は原子力発電事業から撤退しましたが、その際に1兆4千億円の損を出しました。
原発事業の失敗や粉飾決算が業績の足を引っ張ったために、半導体部門に思い切った投資が出来ませんでした。そのために市場は大きいが投資も膨大になるDRAM事業をあきらめ、フラッシュメモリ事業に注力しました。日本の半導体メーカーの先頭を走っていた東芝が、世界的な半導体競争で脱落しはじめたのです。
そのフラッシュメモリ事業も、原子力発電事業からの撤退に必要な1兆4000億円をねん出するために、その6割を切り売りしてしまいました。