海外のもの言う株主は、会社法をたてにとっている

「企業は100%株主の所有物である」と規定する会社法で、「企業は社員みんなのもの」と考えている現実の企業を規制しようとするおかしさは、明治時代から日本の産業界の抱える本質的な問題でした。

しかし、このような法規制の範囲内で、日本の大企業は「会社は社員みんなのもの」という考え方で福祉政策を実施していました。例えば、従業員の家族のための奨学金制度とか、退職金制度、従業員の家族と周辺住民のための病院の設立などです。

戦後の高度成長期は、まさに「企業は社員みんなのもの」という日本型経営の全盛期でした。日本型経営では、株主は企業の所有者ではなく、外部にあって配当を要求したりするめんどくさい存在という感覚がありました。

そこで資金が必要なときは、増資をするのではなく、銀行から融資を受けるのが普通でした。日本の銀行は貸した金が利息付きでちゃんと返済されればよいので、「もの言う株主」のような短期的な資本取引によって儲けようとはしませんでした。だから企業も「株主が企業の所有者だ」という法律上の建前をあまり気にする必要がありませんでした。

外国資本の日本企業買収という問題が起きても、通産省が、国際的な資本取引に強力に介入し、日本企業を外資から守っていました。当時の通産省は、Notorious MITI(悪名高い通産省)と呼ばれていたのです。

ところがバブルが崩壊してから状況が変わりました。銀行は不良債権を処理するために、それまで企業に貸していた金の返済を迫るようになりました。いわゆる貸し剥しです。そこで企業は銀行融資に頼る危険性に目覚め、増資による資金調達を行うようになりました。

世界経済のグローバル化が進展して、通産省による行政指導が非難されるようになったため、日本は外国投資家の資本取引への通産省の監視を大幅に緩めることになりました。

このようなことから、事業の失敗によって生じた損を埋めるためには、海外から出資を募るしか方法がないようになりました。会社法では、株主が企業の所有者です。

東芝をはじめとして多くの日本企業は、エフィッシモのような「もの言う株主」に対抗しなければならなくなっています。企業の経営者は、「企業はみんなのもの」という意識でいるのに、「もの言う株主」は、「企業は100%株主の所有物である」と考えています。そうして、会社法は「企業は100%株主の所有物である」と規定していて、基本的に「もの言う株主」の味方なのです。

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