会社法は、日本企業の実態に合っていない

東芝の技術が外国に狙われていますが、原因の一つは日本の会社法に問題があることです。

日本の会社は、社長から現場の末端の従業員まで含めた「社員」みんなのものだ、というのが実態です。株主は会社に金を貸している銀行と似たようなもので、会社の外にある利害関係者の一つに過ぎません。このような実感は、日本の企業で働いた経験があれば、誰でも持っています。

ところが会社法では、会社は100%株主のものです。従業員は、1か月分の給料を前払いすればいつでも解雇できる「雇い人」に過ぎません。「企業は100%株主の所有物である」と主張する会社法で、「企業は社員みんなのもの」と考えている現実の企業を規制しようとするから、問題が起きて当たり前なのです。

日本の会社は、江戸時代の藩がモデルになっています。代々の殿様と家来との濃厚な人間関係の中で、領地を経営して自分たちの生活費を稼ぎだしていたのが藩でした。企業は藩と同じで、永遠に存続し、社員は企業に忠誠を誓うことが前提になっています。

ところが、欧米の会社の起源はルネッサンス期のイタリアにあると考えられています。イタリアの商人たちは地中海貿易を行っていましたが、当時の船による交易は自然災害や海賊などのリスクが大きかったので、リスクを分散する必要がありました。

そこで株式会社を作り、株主から集めた資金で船をチャーターし、船長や船乗りを雇い商品を購入して交易に出航しました。1~2年かけて地中海を一回りし、母港に帰ってきて事業を清算し、利益を株主で分配しました。これがいまの株式会社に発展したわけで、最初から会社は株主のものでした。また会社は永遠に存続するものではなく、短期間に利益を出すことが前提になっています。

明治政府は、富国強兵のために、急いで経済を資本主義化しなければなりませんでした。そこで欧米の会社法をそのまま日本に導入したのです。このような経緯で、「企業は100%株主の所有物である」と主張する会社法で、「企業は社員みんなのもの」と考えている現実の企業を規制しようとするようになったのです。

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