日本国憲法は日米間の条約だ、という説がある

日本国憲法が無効だとしたら、現実を規制している法律の根拠がなくなります。多くの日本人はそれを心配して、日本国無効説を認めようとしません。だから、さまざまな「日本国憲法無効説」は、この点に配慮して不安を取り除くようにしています。

例えば、大月短期大学教授で日本教育史が専門の小山常実先生は、『日本国憲法無効論』を書いて、「日本国憲法」が憲法としては無効であるとしています。ところがその一方で、無効確認の決議が国会で正式になされるまでは有効だとも述べています。

国会の決議がされるまでは有効だというのは、論理的におかしいです。無効であれば最初に遡って効力がないはずです。このように論理的に無理をしても、戦後国会で制定された法律の効果を認めようとしているのです。

南出喜久治著『占領憲法の正体』も日本国憲法の無効を主張しています。南出先生は弁護士で、高校を卒業後独学で弁護士資格をとりました。大学で法律学を学んでいないので先入観をもたず、独自の憲法観を作り上げました。

南出先生は、日本国憲法は、日本とアメリアとの間で締結された条約だ、という理論を展開しています。つまり日本は、大日本帝国憲法に基づいてアメリカと「日本国憲法」という名称の条約を締結した、というわけです。

条約は国内法より優先するので、大日本帝国憲法 - 「日本国憲法」という名の条約 - 普通の国内法、という序列になります。だから、「日本国憲法」という名の条約と矛盾する法律は無効です。

「日本国憲法」は条約ですから、国会の決議で廃棄できます。そして廃棄するまでは有効なので、70年間にわたって制定させ続けた法律は、そのまま有効性を維持します。このような仕組みで、日本の法的安定性を維持しているわけです。大日本帝国憲法は無傷で生き続けているので、「日本国憲法」廃棄後に改正したら良い、ということです。

私は、大日本帝国憲法はかなり良くできた憲法なので、総理大臣の規定を追加し、枢密院を廃止するなどの若干の手直しをすれば、今でも使えると思います。しかし私は、大日本帝国憲法は敗戦とともに消滅したと考えるので、南出先生の説に賛同できません。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする