日本国憲法無効論は、時とともに影が薄くなった

大日本帝国憲法の改正手続きは無効なので、大日本帝国憲法を改正したものと称する日本国憲法は存在しません。私だけでなく、多くの人も同じように考えています。その中には石原慎太郎や小沢一郎などの政治家もいます。

大日本帝国憲法は昔ながらの状態で残っているのか否かについては、賛否両論があります。私自身は、大日本帝国憲法は消滅している、と考えています。多くの国民が「憲法は存在している」と思い込んでいることが、その憲法が存在している条件です。私は、多くの日本人が「大日本帝国憲法はいまだに生きている」と信じているとは、思えないからです。

昭和27年に日本の占領が解除されたころには、日本国憲法無効論者がかなり多くいました。彼らは、独立を機に日本国憲法の無効を国会が宣言しよう、と盛んに提案していました。ところが当時の吉田茂首相は、日本国憲法は有効だと主張しました。アメリカは当時、朝鮮戦争を行っていて、日本にも軍隊を作らせて朝鮮戦争に参加させようとしていました。しかし、吉田茂は、再軍備は日本の経済復興の妨げになると考えて、憲法第9条を理由にしてこれを断りました。

吉田茂は、日本の将来を見据えて日本国憲法を有効だと判断したのではなく、短期的な政策のために憲法9条を利用しただけでした。その後日本は、吉田茂の考え方を踏襲し、軍備に金をかけずに経済復興を最優先してきました。この状態が長く続いたので、いつの間にか「日本国憲法無効論」の影が薄くなったのです。

今は、日本国憲法無効説は流行っておらず、多くの人はトンデモ説のようなイメージを持つかもしれませんが、日本国憲法無効説は、きちんとした論理的な裏付けがある理論なのです。

昭和30年(1955年)に自由党と日本民主党が合併して自由民主党が出来ました。この時に「党の使命」として、次のようなことを掲げています。「現行憲法の自主的改正を始めとする独立体制の整備を強力に実行し、もって、国民の負託に応えんとするものである」

結党の当初から、この憲法は問題だとして改正することを宣言しているのです。当初は憲法改正が出来ると考えて、無効説を取らずに一旦有効としたうえで改正を考えたのでしょう。ところがそれから、66年間も改正できないまま経過しています。安倍晋三前総理も「憲法改正」を悲願としていました。66年前から党が「改正」と主張し続けていたので、いまさら無効だとも言えないのでしょう。

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