自国中心主義は、キリスト教や神道から生まれた

自国優先主義は、数千万人以上の人口を有する民族や国民のすべてを仲間だと考え、その中で互いに助け合おうとする考え方です。

西欧の自国優先主義は自然に発生したものではなく、宗教が介在して生まれました。中世、すべての人間はカトリックを信じていました。キリスト教は、信者を仲間だと考える宗教です。そして周囲をイスラム教などの異教に囲まれていたので、西欧人たちは、自分たちは同じ宗教を信じる仲間だという意識はありました。イスラム教に占領された聖地エルサレムを奪還しようという十字軍は、西欧全体の仲間意識から実施されました。

しかし西欧は民族的に雑多で、言葉も分かれていました。文化や言葉が違うとコミュニケーションが不便で、完全な仲間意識はできません。そういう時に宗教改革が起きて、キリスト教がさまざまな宗派に分裂しました。

各国王は、自分の国民に対して自分と同じ宗派を信じるように強制しました。自国の中にいる別の宗派を弾圧して同じ宗教で統一しようとしたのです。その結果として、文化と言語だけでなく宗教も同じ国民が誕生し、仲間意識が完全に出来上がりました。

フランス国王は自国をカトリックで統一しようとして、プロテスタントを虐殺しました。イギリス王は英国国教会で統一しようとして、カトリックやピューリタンを弾圧しました。西欧で自国中心主義が強固になったのは、宗教改革・宗教戦争後です。

日本は周囲を海に囲まれており言葉共通しているので、自然に日本人全体を仲間だと思うようになりました。江戸時代中期以後、国学が盛んになり、神道の勢力が増してきました。神道もキリスト教と同じように、信者を仲間だと考える宗教ですから、自国優先主義が強化されました。

中国やインドが自国中心主義になっていないのは、宗教も原因の一つです。儒教や道教など中国の宗教は、血族である宗族を重視する宗教です。ヒンドゥー教はカーストという階級制度を支持しています。どちらも、信者全体が仲間だという教義ではありません。

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