30年近く前にバブル経済が崩壊し、日本の労働環境が厳しくなってきて終身雇用が維持できなくなり、中高年の早期退職が行われるようになりました。また、新卒が正社員になる道も狭くなり、やむを得ず労働条件の悪い非正規従業員になる若者も増えてきました。
終身雇用と年功序列制度は戦後の高度成長期にだけ見られた現象であり、その後は家制度が昔ながらの状態に戻ったと言えます。戦前に終身雇用や年功序列制度を実施していた組織は陸海軍だけでした。それも士官学校を卒業した士官だけで、徴兵された兵隊はその範囲外でした。
政府や企業の職員については、中間層は年功序列や終身雇用の要素がある程度ありましたが、トップは外部の人材をヘッドハントすることが多かったです。例えば今の中央官庁の次官や局長は年功序列で成り上がっていますが、大正時代などでは外部の人材を政治家が任命していました。今のアメリカと似ていたのです。
江戸時代の大名の家も、前にも説明したように年功序列ではありませんでした。家柄によって就くべき役職が決まっており、勤務年数が増えるにしたがって昇進するというシステムではありませんでした。
また終身雇用なのは正規の武士(石取り侍)だけで、足軽などの臨時雇いの仕事は不安定でした。赤穂浅野家の例では、幕府から1000人の雇用が義務付けられていましたが、終身雇用の正規の武士は300人ほどしかいませんでした。
今の日本の家(企業など)は正規社員と非正規社員に分かれつつあり、戦前や江戸時代の状態に戻りつつあります。そして正規社員には良い待遇を保証する代わりに、企業に対し忠誠心を抱き、自分の全てを組織に捧げる覚悟を要求するわけです。
この家の考え方が日本企業の強さの秘訣であり、この制度はそれなりの意味があります。その一方、非正規雇用者の収入が低く抑えられて結婚もできない状況になっており、少子化の大きな原因になっています。
非正規雇用者はきちんとした職業訓練を受けられないので未熟練労働者のままに放置され、外国人労働者との競争にさらされています。これが彼らの低賃金の大きな原因です。今外国人労働者を大量に日本に移住させようという法律を作ろうという動きがあります。
日本人が全員正社員の状態で外国人労働者を一時的に雇用するのであれば、まだ問題は小さいです。しかし、日本人と外国人の非正規労働者が混在し区別できない状況が長く続けば、日本は大変なことになります。
外国人労働者は専門性を持たず、他人どうしが助け合うという考えを持っていないので、日本の良さが破壊されてしまうからです。このような法律を成立させては、なりません。