ハイエクは、なぜイギリスは社会主義化しているのか、を説明しています。
自由主義のおかげで経済的繁栄を手に入れると、イギリス人はまだ存在している不運や災害に耐えられなくなり、早急な解決を求めるようになりました。自由主義によって達成された諸制度を当然のものみなす一方、自由主義という古臭い原理に固執することは新しい欲求の障害になると考えました。このようにして思想の潮流が逆転し、イギリスはドイツ生まれの社会主義思想の輸入国になったのです。
この部分を読んで、私は「なるほどなあ」と感じました。今の日本の制度は、自由主義を前提として作られています。社会主義系の「サヨク」は、それらの制度を当然の前提として、自分たちの社会主義的な要求を上乗せしているため、その主張が全体として整合性のないものになっています。
次にハイエクは、競争社会と計画社会の説明をしています。計画が有効なのは単純な社会だけで、社会が複雑になれば競争が効力を発揮します。社会は相互に複雑に関連しているので、一つが変化すれば各方面にその影響が及びます。
従って、政府が社会全体の関連を理解しながら計画を立てるのは、至難の業です。そもそもハイエクによれば、人間が認識できるのは自分の頭の中にある分類体系だけであって、外界を直接正確に理解することはできません。従って、社会全体の関連を理解しながら計画を立てるのは不可能です。
一方の競争社会では、価格交渉を通じて他人と折り合いをつけることができます。人間は社会全体の関連を考える必要はなく、目の前の価格交渉さえしていれば、日常生活は回っていくのです。
ナチス・ドイツは、ドイツ国民にフォルクスワーゲンという単一車種を使うことを強制しました。これによって、ドイツ人は大量生産によりアメリカ人よりも安く車を買うことができるようになりました。これは社会主義のメリットです。
しかし競争していれば、技術革新によってコストは下がります。短期的に見れば競争のデメリットはありますが、長期的に見れば物質的な進歩も競争によってもたらされます。