ハイエクは、経済的自由がないのは不幸だ、と書いています。
自由主義経済の中で暮らしているのであれば、財布の中に入っている3万円には、いろいろな使い道があります。3万円でスマホを買っても良いし、自転車を買ってもいいし、小型冷蔵庫も買えます。スマホがどうしても欲しいのであれば、それほど興味のない自転車と小型冷蔵庫をあきらめればいいのです。
社会主義経済の社会では、自転車と小型冷蔵庫しか売っていない場合があります。何を優先的に作るべきかを決める経済当局が、スマホの重要性を認識しなければ、国民は3万円持っていてもスマホを入手できないのです。
社会主義経済の社会には選択の自由がなく、当局の決定を強制されるのです。このときに人はもの凄く不幸になるようです。今の日本で暮らしているわれわれには、選択の自由がない苦しみをよく理解できないようです。
東欧が社会主義圏だった時、多くの人が命がけで西側に脱出してきました。東側にいれば最低限の衣食住は確保できるのに対して、西側に逃げて来ても生活がどうなるか分かりません。それでも彼らは西側に逃げてきました。それは、「東側には選択の自由がなかったからだ」、と彼らは一様に説明しています。
社会主義国の当局は、人間は食い物と自転車と冷蔵庫があれば生活に困らず、幸せに暮らせるだろう、と思ったわけです。ところがそれとは違う考えを持っている人が、世の中には非常に多いのです。
昔の人は、自分たちが作った物で生活をしていたので、支配者がその自由を統制できる範囲は限られていました。ところが今は分業が進んでいるので、私たちは他人の生産活動に頼っています。従って社会主義の社会になると、政府は私たちの生活の大部分を統制することができます。その結果、ストレスが溜まっていく一方なのです。