大乗仏教は、きわめて特殊な宗教である

国民の多くが仏教を信仰している国は少ししかありません。インドは800年ほど前に仏教が絶滅し、今では仏教徒は200万人ぐらいしかいません。支那と朝鮮の仏教は衰退し、仏教徒は国民の1~2割程度です。仏教国と言えるのは、日本以外は、東南アジア諸国とモンゴル・チベットぐらいです。仏教徒の信者数もキリスト教やイスラム教に比べてかなり少ないです。

それでも仏教が「世界の三大宗教」のひとつだと言われる理由は、19世紀の西欧で仏教がもてはやされたからです。当時、西欧諸国はアジアに植民地を持っていました。現地人が信仰している仏教がどういう宗教なのかを、統治のために知っておかなければなりませんでした。

19世紀の西欧ではキリスト教の信仰に疑問を持つ者が増え、キリスト教とは全く違う仏教に対して関心を持つ人が増えたという側面もあります。今となっては信じられないでしょうが、ケンブリッジやソルボンヌなど西欧の有名大学では、仏教の研究が盛んに行われていました。そして明治時代の日本人は西欧に留学して、仏教の基本を学びました

仏教はまた、19~20世紀の西欧哲学にも大きな影響を与えました。19世紀ドイツのショーペンハウエルという哲学者の主張は、仏教の教義そのものです。20世紀フランスの哲学者であるサルトルやボーボワールが唱えている「実存主義」も、仏教から大きな影響を受けています。

このように19世紀の西欧では、仏教は知的で高尚な宗教だと考えられ、一目置かれていました。だから仏教が三大宗教のひとつだ、とされたのです。ただし、19世紀の西欧で仏教がもてはやされたとは言っても、西欧人が仏教という宗教を信じたわけではありません。従って、仏教の教えが西欧社会を動かしたということもありません。

仏教は、根本仏教(おしゃか様が唱えた教え)、小乗仏教、大乗仏教に分かれていますが、それぞれに中身がかなり違います。東南アジアの仏教は小乗仏教なので、大乗仏教を信じている主要国は日本だけです。

大乗仏教は地球規模でみると、極めて特殊な宗教です。その特殊な宗教を信じて影響を受けているので、日本人の行動が極めて特殊に見えるのです。

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