チンパンジーと人間の脳の働きはかなり違う

「人間と動物は基本的に同じなのか、違うのか」という論争が昔からずっと続いています。かつては、「神が動物とは別に人間を作ったのだから、両者はまったく違うものである」という考え方が主流でした。

ところが19世紀後半になって進化論が登場し、人間は動物からサルの状態を経由して今のような人間になった、という考え方が主流になりました。脳の構造に関しても、ネズミの脳と人間の脳は各部位の大きさは違うが同じ機能を備えており基本的に同じ構造になっている、と考えられるようになりました。

ところが最近の脳科学の発展によって、動物の脳や神経は人間とはかなり違う、ということが分かってきました。

チンパンジーは人間に最も近い動物です。両者は700万年ほど前に共通の先祖から分かれ、別々の進化の道を歩み始めました。チンパンジーと人間の外観には似ている部分がありますが、脳の働きはかなり違います。

人間の幼児が母親からはぐれて迷子になったら、泣きながら母親を探すでしょう。その泣き声を聞いた母親は、「ここよ、ここよ」と大声を出して、子供に自分の居場所を知らせます。

ところがチンパンジーの母親は、子供の声を聞いても、声を出して子供に合図をしようとしません。聞こえてくる声が自分の子供のものだとは分かるのですが、子供が迷子になって困っている、と子供の気持ちに気づかないのです。

チンパンジーに、ボタンを押すと穴からエサが出てくることを教えると、チンパンジーはちゃんと学習して、腹が減ったらボタンを押すようになります。しかし、このチンパンジーは、仲間にボタンを押してエサを得る方法を教えようとしません。「エサの取り方を教えてやったら相手は喜ぶだろう」ということを思いつかないのです。

人間の男女が、音楽に合わせてワルツを踊りながら部屋を横切るのを見たチンパンジーは、彼らがダンスを楽しんでいるとは思わず、単に部屋を横切っている、としか理解しません。単に部屋を横切るためなら、これほど効率の悪い歩き方などしないはずだ、ということを考えないのです。

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