日本人は、法改正に臆病すぎる

「国会法」「自衛隊法」「裁判所法」など重要な法律が憲法を構成するという説の場合、これらの重要な法律も、通常の法律の改正ルールと同じく、衆議院と参議院のそれぞれの過半数を得れば改正することができます。

その時々の世論の流行りによって簡単に国家の骨格が変更できるわけで、国家体制が不安定になる恐れはあります。その反面、社会の変化に素早く対応できるという利点もあります。

大日本帝国憲法は、様々な問題がありながら一度も改正されることなく、56年後に消滅しました。「日本国憲法」が欠陥を抱えているのに、73年間もその状態が放置されたままだったことを考えると、容易に憲法を改正できるこの説の方が、日本が抱えている問題を解決するのに、好都合です。

憲法に限らず一般の法律でも、日本ではなかなか改正されずに放置されて、問題がどんどん大きくなる傾向があります。それは日本人の法改正に対する考え方が硬直しているからです。

法律には、「後法は前法を破る」という原則があります。従来からの法律と新しくできた法律が矛盾する場合には、後の法律が優先するという原則です。日本もこの原則を採用しているのですが、具体的な事例がほとんどありません。古代ローマでは、平民会で市民が集まってその場で法律を作っていたので、昔作った法律を忘れていて、それと矛盾する法律を新たにつくることが頻繁にあったのです。

イギリスやアメリカは、「後法は前法を破る」という原則を多用して、国会議員が従来の法律にあまり関心を払わずに、どんどん法律を作ります。新旧の法が矛盾したら、裁判で争えば良いという態度です。この習慣により、時代の変化に合わせて法律を柔軟に対応させることができます。

一方の日本では、議員立法はほとんどなく、官僚が法案を作って国会議員はそれを審議するだけという場合がほとんどです。それは、法律を一か所変えると他の法律に影響を与えるので、官僚たちが膨大な時間をかけて関係する法令を必死にチェックするからです。

そのためにどうしても、法改正に慎重になります。さらに官僚に都合の悪い法改正を行おうとしないのです。細かすぎる仕事のやり方のために、日本の社会は対応に後れをとり、問題がどんどん大きくなります。

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