「占領軍が勝手に作った説」から見ても、「大日本帝国憲法第75条違反説」から見ても、「日本国憲法」は成立しておらず、無効なことは明らかです。論拠は違えども、ここまでは両者は一致しています。
ところが、「いまの日本の憲法は何なのか」に関しては、両者の考えは違います。
「占領軍が勝手に作った説」の論者たちは、大日本帝国憲法は敗戦とともに消滅してしまったと考えているようです。そして「日本国憲法」は無効だと考えています。
ところが現実社会は、「日本国憲法」は存在しているという前提に立ってその上に法律関係を積み上げているので、無効宣言をして過去からずっとなかったことになると、「法的安定性」が損なわれパニック状態になってしまいます。
そこで、「暫定憲法」「占領期間限定憲法」などと理由を付けて、とりあえず「日本国憲法は有効だと主張しています。しかし、無効というのは最初から無効なのであって、「無効宣言するまでは有効なのだ」というのは、論理的に成り立ちません。
「大日本帝国憲法第75条違反説」は、大日本帝国憲法は無修正でそのまま残っていると考えています。占領軍は大日本帝国憲法を修正して「日本国憲法」にしようとしましたが失敗し、アメリカと日本との間の国際条約になっていると主張するのです。
しかし、「日本国憲法」は憲法としては無効だが国際条約になっている、という主張は無理があります。憲法になることに失敗したのなら、そのまま無効のはずです。
大日本帝国憲法は、そのまま無修正で生き残っている、と考えて良いのでしょうか。幕末の尊王思想の熱気と日本が植民地にされるという危機感が明治維新をもたらし、その考え方を基にして大日本帝国憲法ができました。
ところが敗戦によって、天皇陛下は丸裸になりました。身を守る軍隊はなく、皇室さえ日本人が守り切ったというよりも、アメリカが存続させると決めたから残った、というのが実態です。私は皇室を貶めるつもりはないのですが、これが敗戦当時の現実だったのです。