法的安定性の問題

日本の憲法の仕組みを何とか変えようとしている人たちの意見が分裂しています。「日本国憲法」は成立しているが問題があるから、それを改正しなければならないと考えるグループがあります。その一方で、「日本国憲法」など成立しておらず無効だ、と考える別のグループがあるのです。

安倍晋三首相など自民党は、「日本国憲法」は成立していることを前提に、その改正を目指す立場に立っています。これが今の多数派です。なぜ自民党が「日本国憲法」を成立していると考えるようになったのかは、これから徐々に説明していきます。

軍事的に占領されている時に、嚇かされて作った合法的に憲法など成立しているはずがないではないかと考えるのが、「日本国憲法」無効派です。法論理的には、筋が通っています。私もこの立場です。しかし、少数派です。

無効派の学者の多くは、「学校で変な洗脳を受けたので、多くの日本人は日本国憲法が素晴らしいと思っている。占領下でメチャクチャな作り方をしたことを多くの日本人は知らないから、それが無効だとまでは考えられないのだ」と説明しています。

色々な集会で「日本国憲法無効論」を説いてきた弁護士は、違う説明をしています。「占領下で国民が自分たちの憲法を作ることなど理屈に合わないではないか」と説明すればみんな納得する、というのです。誰でもが「日本国憲法」の怪しさに気づいているわけです。

それでも多くの日本人が「日本国憲法無効論」を支持するのをためらうのは、「法的安定性」の問題があるからだ、と言うのです。今まで信じて行動をしてきた法的枠組みを、今になってそのような法的事実がないと言われたら困るわけです。

確かに、この「法的安定性」という考え方は実社会で必要です。例えば、私が骨董屋で古い茶碗を1万円で買ったとします。後から男が家にやってきて、「実はこの茶碗は私の所有物で、一週間前に自宅から盗まれた。返せ」と言われたらどうするか、という問題です。

確かに、この茶碗は盗まれた男の物ですが、民法はそれを知らずに買った私を保護していて、私の所有権を認めています。出発点が誤っていても、現状を認めようという考え方です。