近代になって、言葉が統一され「同じ民族」という意識が生まれました。そこから、「民族の独立」「民族自決」という民族意識が出てきました。
西欧では王室間の嫁取り婿取りが当たり前で、国王にとっての仲間は自国の国民ではなく外国王室の親戚でした。イギリスでは300年前に、ドイツのハノーバー王国の国王を自国の国王に迎え入れました。長い間、それで何の問題もなかったのです。
ところが第一次世界大戦でイギリスとドイツが戦争をするようになり、イギリスの支配層としては王家がドイツ系ではいかにも都合が悪くなりました。そこで戦争中に、イギリス王家は苗字をハノーバーというドイツの地名から一族の居城のあるウィンザーに変えました。この時に多くのドイツ苗字の貴族も苗字を変えました。例えば、第二次大戦の時の軍司令官だったマウントバッテン侯爵は、もともとはバッテンベルグでした。
第一次世界大戦後の世界は、まさに民族主義全盛の時代で、国際連盟の原則は「民族自決」でした。第二次世界大戦後も民族主義が大原則で、国連も「民族自決」の原則を掲げています。従って今の国際関係も民族主義の原則で出来上がっています。
最近でこそ国連はグローバル主義に染まって、民族の独自性を主張する者たちに敵対していますが、これは国連の大原則に反します。そもそも安全保障理事会の常任理事国に就任する国が固定していますが、これこそ民族主義です。
国際的なルールだけでなく、国民のレベルでも民族主義は健在です。この何十年かは民族主義を否定する考え方が台頭しました。大企業は世界中でビジネスを展開するために、国境を敵視し、西欧では国家主権を否定するEUが出来ました。
しかし今は、その逆の流れが加速し、本来の民族主義に世界は戻りつつあります。イギリスはEUから離脱しようとし、今年のEU議会の選挙では、EU反対派が議席を伸ばしました。アメリカではトランプ大統領が現れて、「アメリカ・ファースト」と民族主義を丸出しにしています。