アメリカでは、外国人も意見を述べることができる

アメリカの福音派は、自分たちで勝手に聖書の予言が成就する時期を推測し、「早く戦争が起こって、神の国が来てほしい」という自分たち願いを実現させようと、アメリカ政府に圧力をかけています。

このような一部の信者の考えによって、アメリカの政府が動いても良いのでしょうか。アメリカ合衆国憲法の修正第一条は、「連邦議会は、国教を樹立し、若しくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない」と定めています。

植民地時代、各州は特定の宗派を州の宗教に指定し、それ以外の宗派を排除していました。その苦い経験から、国家が特定の宗派の考え方に従って政策を決めてはならない、と憲法で定めたのです。今のアメリカ政府が行っている対イラン政策は、憲法違反の疑いがあります。

アメリカとイランの対立は、宗教的なものです。だから経済的な損得や従来からの交渉経過をあげつらっても限界があります。その一方で、宗教問題は非常にデリケートです。また宗教に偏見を持っている人が多いので、政治の公式な場に宗教を持ち出して議論するのは、非常な困難が伴います。

そもそも会話の中に宗教の話を持ち出すのは、マナー違反だというのが社交の世界の常識です。特に日本人は宗教問題を深く考える習慣がないので(日本人が宗教的でないということではありません)、国際関係を宗教の視点から見ません。だからアメリカとイランの問題を日本が仲介するのは、余計に難しいです。

イランの政権は、イスラム革命を成し遂げた勢力を基盤としているので、イスラム教の考え方の問題点を突いてイランの政策の是非を論じるのは、反感を煽るだけでどう考えても無意味です。従ってイランに対しては、経済や政治など宗教以外の事実関係を議論してイラン政府の考え方を変えていくしかありません。

一方のアメリカは、情報を公開し政策をオープンな場で議論できる国です。外国政府や外国人は、参政権を行使して直接アメリカの議会に影響を与えることはできませんが、さまざまな手段で国会議員に働きかけたり、世論に訴えたりすることはできます。

以下はひと続きのシリーズです。

6月28日 「イラン核合意」は中途半端

6月29日 イランは本気でイスラエルに対抗している

6月30日 イランは、中東のリーダーになろうとしている

7月1日 ユダヤ人もアメリカ人も、同じように、神から約束された地に移住した

7月2日 アメリカの正副大統領は、聖書に書かれていることはすべて本当だ、と信じている

7月3日 中東で大戦争が起き世界を大災害が襲った後神の国が現れる、と多くのアメリカ人が信じている

7月4日 アメリカがイスラエルを支援しているのは、宗教的な理由から

7月5日 イランとアメリカの間を仲介できるのは、日本だけ

7月6日 アメリカとイランの対立は宗教対立である

7月7日 「Bチームが日本のタンカーを攻撃した」という説がある

7月8日 イランの革命防衛隊がタンカーを攻撃した可能性もある

7月9日 イランの安定は、日本にとって非常に重要である

7月10日 ハメネイ師は、安倍総理と今後も話し合いを続けることを望んだ

7月11日 イランとアメリカの主張には、それぞれ弱点がある

7月12日 イスラム教によって中東をまとめることは、できない

7月13日 聖書の預言がいつ起きるのかは、分からない

7月14日 神様を召使いにする考え方

7月15日 アメリカでは、外国人も意見を述べることができる

7月16日 日本もそろそろ他国の世論を誘導する技術を磨いたほうがいい

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