おしゃか様は、バラモン教を改革しようとした

おしゃか様は王子様で、妻子と多くの妾を持ち、将来は国王の地位を約束されていました。失ったら悲しくなる苦の種をたくさん持っていたのです。そこで29歳の時に全てを捨てて出家し、バラモン教の僧侶となって修業を始めました。

バラモン教は、天にはブラフマンという神様がおり、人間の心の中にはアートマン(魂)がある、と考えています。そしてこの二つが繋がっていることを実感した時に悟ることができる(苦から脱却できる)としています。それを実感するための修業が、ヨガです。

おしゃか様は6年間修業を続け、体がガリガリになりましたが、ブラフマンとアートマンが繋がっているという実感を得られませんでした。そこで彼は、修業を中止しました。

本当にブラフマンという神様が存在する、という証拠はありません。そこで彼は、「ブラフマンが存在するということと苦を滅することとは関係がなく、自分の心を制御するだけで良い」という結論を出しました。

「ブラフマンなど存在しない」ということを、おしゃか様が主張しているわけではありません。「あってもなくても、そんなことはどうでも良いではないか」と言っているのです。おしゃか様は、存在が証明できないことを思考から排除しました。おしゃか様の教えは宗教ではなく、科学を基礎とした哲学なのです。

おしゃか様は、従来のバラモン教の教えをもう一つ改革しました。
今から3000年前に中央アジアにいたアーリア人の一部がインドに侵入し先住民を奴隷にして、カースト制度を作りました。バラモン教は白人のアーリア人だけのための宗教で有色人種の先住民を相手にしていませんでした。バラモン教の僧侶も白人のアーリア人しかなれませんでした。

おしゃか様はこの点を改めて、有色人種も僧侶になれると考えました。ここから人種差別を否定し、人種の平等を説く仏教の教義が生まれました。一説によると、おしゃか様の出身部族であるシャカ族は、チベット系の有色人種だったそうです。