本当は日本国憲法など成立していないので、９条２項の規定も存在しません。ところが歴代の日本の政府は、これがあるほうが色々な面で好都合なので、日本国憲法が成立していないという事実を隠してきました。
近年になって日本を取り巻く国際環境が激変し、日本は本気になって安全保障体制を整備しなければならなくなりました。その時に一番の障害になるのが、９条２項です。そこで阿部首相は憲法改正に乗り出しました。本当は「日本国憲法など成立していない」といえば一番簡単なのですが、歴代自民党政府がこのことを隠してきたために、今頃になってこの事実を公表するにはかなりの覚悟を要します。
日本人は従来の体制に慣れきっているために、自民党の中でさえ、憲法改正を真面目に考えている人は少数しかいません。９条に関して国民にアンケートをとったら、９条は時代に合わないという回答が多数でした。では９条を改正すべきかと問うと、それに賛成する人は少なかったのです。
国民は９条を巡る神学論争にうんざりして、一種のオオカミ少年状態になっています。長年の政府の不作為が積もって、ニッチもサッチもいかなくなっています。このような悪環境の中で、阿部首相は判断ミスをしてしまいました。
９条２項を削除または改正するという正面突破策に対する野党やマスコミの反対があまりに激しいために、１項２項をそのままにして「前二項は自衛隊を設けることを妨げない」という３項を追加して、憲法改正を少しでも前に進めようという中途半端な改正案を発表してしまいました。
この３項追加案が真面目な改憲推進派に不人気なことに目をつけた希望の党が、選挙公約に「憲法改正」を掲げて対抗してきました。このために改憲勢力が分裂して勢力が弱くなる可能性もあります。希望の党が憲法改正に真面目に取り組むという確証もありません。
これまでの説明でもわかるように、９条２項の削除はものすごく抵抗が大きいのです。