1952年日本が独立を回復した時、吉田茂首相は「日本国憲法は成立していない」という宣言をしませんでした。ちゃんとした軍備をするにはお金がかかるので、第9条を盾にして日本の防衛の大部分をアメリカに任せ、軍事費の支出を抑えて経済発展のための投資資金を確保しようとしたからです。
以降、日本政府は「日本国憲法は成立していない」という事実にほうかむりをし、自衛隊というあいまいな存在を合憲だと解釈して、ほどほどの軍備を維持してきました。政府が「日本国憲法は成立していない」という宣言をしないので、学者もその線に沿って学説を述べてきました。
政府も学者もマスコミも「日本国憲法は成立していない」という事実を言わないために、日本国民のほとんどは、この事実に気がついていません。「軍備に金を使わずに経済発展に注力する」という敗戦後の戦略が長い間うまく機能していたために、多くの日本人は他の選択肢を考えられなくなり、「第9条によって日本は平和を維持することができる」と信じ込んでしまいました。
ところが近年、アメリカの相対的国力が低下し、シナや朝鮮などの敵性国家が台頭してきました。こうなるとアメリカとしても無条件で日本を守ることができなくなりました。日本を守るために支那と戦うことになれば、膨大な費用と人的損害が発生するからです。
従来の日米安保条約は、アメリカは日本を守るために日本の敵と戦うが、日本はアメリカを守るためにアメリカの敵と戦う必要はない、という考え方が奥底にありました。片務的な内容だったのです。では今のアメリカの国民は、アメリカの敵と戦って血を流す覚悟のない日本のために、強大な軍事力を持った支那と戦おうという気になるでしょうか。アメリカに日本を守ってもらうためには、日本もアメリカの敵と戦う覚悟を求められるようになったのです。
2年前に成立した安全保障関連法案(「国際平和支援法」と「平和安全法制整備法」)は、日本とアメリカが互いに助け合う関係(集団的自衛権)を確保するためのものでした。