前回は、日本国憲法９条２項にいかに日本が苦しんできたかを、説明しました。阿部総理大臣も、もちろんこのことを知っています。だから昔から第９条の改正に向かって努力されてきたわけです。
ところが、９条の改正には反対が強くなかなか改正作業が進展していていないのに、北朝鮮や支那の脅威がますます迫ってきたので、時間が無くなってきました。そこで「前二項は自衛隊を設けることを妨げない」という第３項を追加しようと、阿部総理は考えました。
日本国憲法第９条
第１項
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する
第２項
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない
第３項 ←追加
前二項は自衛隊を設けることを妨げない
第２項を素直に読めば、実質的な戦力を備えている自衛隊の存在は違憲だ、ということになります。ところが自衛隊を無くするのはあまりに非現実的でなので、多くの国民や政党は現実的な視点から自衛隊の存在を合憲と考えています。多くの憲法学者は、現実を重視せず条文を文字通りに読んで、自衛隊の存在を違憲だと考えています。
そこで阿部総理は、せめて自衛隊の存在を憲法に明記して合憲にし、自衛隊員の志気を高めようとして、第３項の追加を思いつきました。前２項はそのまま残すし、多くの国民や政党はすでに自衛隊を合憲と考えているので、この追加を積極的に反対する理由がないのです。
さらに、憲法改正を実施することにより、国民に「憲法はどんどん改正すべきものなのだ」という考えを植え付けて、次の９条２項の削除をスムーズに行うための地ならしをしよう、と考えたわけです。