チベットは、昔は強かった

チベットの歴史を調べてみると、かつては強力な大民族だったのに今は見る影もない、という不思議な印象を持ちます。彼らは、今のチベット自治区だけでなく、青海省全域、四川省の西半分、甘粛省の一部、雲南省の北部にも住んでいます。さらにはブータン・ネパール・インドにも住んでいて、面積を合計すると今のチベット自治区の3~4倍になります。

おしゃか様はネパールとインドの国境付近にあった小王国の王子様でしたが、様々な伝承から判断すると、どうやらチベット系だったようです。ダライラマ14世の亡命政権がインド北部にありますが、この地域はチベット系の住民が多くいます。

チベット人は、7世紀に吐蕃王国を建国し、唐と互角の戦いをするほど精悍な民族でした。しかし、チベットが最盛期の8世紀にインドから仏教が入ってきて精悍さを失っていきました。

12世紀にインドの仏教がイスラム教徒によって壊滅させられたので、大勢の大乗仏教僧侶がチベットに亡命し、以後チベットの大乗仏教化が急激に進みました。チベットの大乗仏教を「ラマ教」とも言いますが、日本の大乗仏教によく似た教義をもっています。特に真言宗とは同系統です。

仏教は、欲望を抑えることによって精神的苦痛から脱却できると教えており、出家することを推奨しています。俗世間は、欲望を抑えきれない人間が互いに争ってばかりいる下らないところだ、と考えるのです。

このような教義から、大乗仏教は国家を争いばかりする悪いものだと考えます。その結果、チベットでは国家は溶けてなくなってしまいました。ダライラマという高僧が、国王のような存在になっていますが、まともな軍隊があるわけではなく、きちんとした官僚組織もありません。ダライラマがチベット人の社会にふわっと載っているという、頼りない状態です。

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