戦争の原因はバイデンのアメリカ?

NATO(北大西洋条約機構)は、ソ連とその衛星諸国に対抗するため、アメリカと西欧諸国が締結した軍事同盟です。加盟国は、1949年の発足当時、米・英・仏・伊など西側の12か国でした。その後、1982年までに、西独・スペインなど西側の4か国が参加して16か国になり、この状態のまま1991年になって、ソ連が崩壊しました。

ソ連が解体して、それぞれの民族が独立しました。解体前のソ連は3億人の人口がありましたが、今のロシアの人口は1億4千万人です。国土も3/4になりました。小さくなったロシアとNATOは、1997年に基本協定を結びました。ところがその後もNATOは旧ソ連の衛星国だった東欧諸国を加盟させて拡大を続けています。1999年までにチェコ・ハンガリー・ポーランドが参加して、全部で19か国になりました。その後も東欧諸国を次々に加盟させて、現在では30か国になっています。

プーチンは、「NATOは東方に拡大しないと1997年の基本協定で約束したのに、それを破っている」と怒っています。これに対してアメリカは、「NATOは一度たりとも不拡大を約束したことはない」と反論しています。

そして今回の侵攻開始前にもプーチンは、「NATOに加盟してはならない」とウクライナに要求していました。ウクライナがNATOに加入し、アメリカの軍事基地がロシアの国境沿いに展開したら、ロシアの安全が確保できないからです。昨年12月のプーチンとバイデンの電話会談の時も、プーチンは「NATOは現状以上の東方拡大をせず、ロシア国境周辺に軍備も配備しない」という「法的保証」を要求しました。しかし、バイデンは拒否しました。

NATOはもともと、ソ連とその衛星諸国の軍事的脅威に対抗するための軍事同盟です。だから1991年にソ連が崩壊して経済的にも政治的にも破綻したとき、NATOの本来の役割は終わりました。ところが、それまでソ連の衛星国で歴史的にロシアの侵略におびえてきた東欧諸国が、NATOに助けを求めるようになりました。冷戦の前と後で、NATOの役割が変わり、その意義も低下しました。

ロシアの方からは何度も、NATOの廃止を西側に要請していました。例えば、2009年にロシアのメドベージェフ大統領は、「欧州の新安保条約」を提案しました。これは、NATOとロシアの対立をなくそうという提案です。しかしこれをアメリカは無視しました。

ジョージ・ケナンはアメリカの冷戦時代の外交を主導した有名な外交官・政治学者です。彼は1997年に、当時のクリントン政権が進めていたNATO拡大政策に反対しました。「そんなことをしたらロシアは暴発する」と警告したのです。

東欧の弱小国がNATOに加入するぐらいはロシアも我慢していましたが、ウクライナは人口が4400万人もある大国で、ロシアと国境を接しています。だからプーチンもウクライナのNATO加入だけは認めることができません。

プーチンの「NATOにウクライナを加入させるな」という要求をバイデンが受け入れたら、今回の戦争は避けられたでしょう。ケナンが心配した通りのことが起きたのです。今回のウクライナ戦争の原因はたくさんありますが、直接的にはアメリカが引き起こした、とも言うことができます。

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