プーチンは、ウクライナのネオ・ナチ勢力が国内のロシア系住民をジェノサイドしているので、ロシアとしては彼らを保護しなければならない、と言っています。だからクリミアをロシアに編入し、ウクライナ東部のルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国の独立を承認し、さらに、ウクライナもこのロシアの行為を認めよ、と要求しているわけです。
1941年ナチス・ドイツの軍隊はソ連に進撃しました。ドイツ軍がウクライナに侵入した時、ソ連に抑圧されていたウクライナ人は、ドイツ軍を解放軍と考えて大歓迎しました。ウクライナの民族主義者にとって、ナチスはロシア人を追い払ってくれる味方なのです。
本家のドイツのナチスは有色人種やユダヤ人を排斥しました。今のウクライナのネオ・ナチ(新しいナチ)は理論的には本家のナチスと同じですが、ロシア人排斥を主目的としています。だからユダヤ人であるゼレンスキー大統領やユダヤ人大富豪で彼らのパトロンであるコロモイスキーと折り合いをつけられるのです。
ステパン・パンデラ(1909~1959年)というネオ・ナチのウクライナ人がいました。彼はウクライナのソ連からの独立を求めて、1941年に侵攻してきたドイツと協力してソ連と戦いました。彼は、ソ連時代は裏切者とののしられていましたが、ソ連が崩壊してウクライナが独立した後は英雄になっています。2010年ユシチェンコ大統領は彼に「ウクライナ英雄」の称号を授与しました。キエフ市は、「モスクワ通り」を「ステパン・パンデラ通り」に改称しました。
パンデラを崇拝しているのが、アンドリー・ビレツキー(1978年 ~)という元国会議員のネオ・ナチです。2014年に反ロシア派がクーデターを起こして親露派のヤヌコビッチ大統領を引きずり下ろした時、ロシア系が多いルガンスクとドネツクで独立運動が起きました。この時にビレツキーが通称「アゾフ大隊」というネオ・ナチの民間義勇軍を作り、ロシア系住民に対して虐殺・暴行を行いました。彼らはオデッサ市で、ロシア系住民50人ほどをビルに閉じ込めて焼死させています。
このアゾフ大隊は、今ではウクライナ内務省管轄の国家親衛隊に所属し、ドンバス地方(ウクライナ東部)の対テロ対策を行っています。つまり、れっきとしたネオ・ナチの国粋団体が国家組織になっています。このようにネオ・ナチがウクライナ政府の中にいて、ロシア系住民に対して乱暴なことをやっています。プーチンが言っていることは本当なのです。ところがゼレンスキーは、ネオ・ナチは政府にはいない、と言っています。