「敵の領土に攻め込んで全土を占領するためには、敵の3倍の兵力が必要だ」というのは常識で、士官学校では新入生に真っ先に教えます。ナポレオンは、ヨーロッパ中から70万人ぐらいの軍隊をかき集めてロシアに攻め込みました。当時のロシア軍の兵力は20万人だったので、ロシア軍は正面切っての会戦ができず、退却を続けてモスクワをナポレオン軍に占領されてしまいました。それでも最終的にはナポレオンは負けてしまいました。
プーチンもロシア軍幹部も、「敵の領土に攻め込んで全土を占領するためには、敵の3倍の兵力が必要だ」という常識を当然ながら知っているはずです。ところが今、ウクライナ軍20万人に対してほぼ同数の18万人でロシア軍はウクライナに攻め込んでいます。互角の兵力で戦っているので膠着状態になっているのは、当然のことです。
ウクライナ軍はもともと20万人しかいませんが、ロシア軍は全部で90万人です。だからその中からウクライナ軍の3倍の60万人を戦争に投入できるはずです。ところが70万人以上はロシア本国に残したままで、18万人しか侵攻に使っていません。この事実から考えれば、プーチンは最初からウクライナを占領する気はなかったということになります。
多くの報道は、今の状況を次のように説明しています。
プーチンとロシア軍幹部はウクライナ軍をなめきっていて、20万弱の兵力で短期間にウクライナ軍を圧倒できると考えていた。ところが欧米諸国がジャベリンなどの高性能の武器をウクライナに供与したので、ウクライナ軍はロシア軍幹部が思っているより強かった。さらに、ロシア軍全体が腐敗し、兵士の士気が低く弱体化しているため、苦戦している。
確かに、今のロシア軍は驚くほど弱体化し、中国の人民解放軍の1/10の戦力しかない、と分析する専門家もいます。ロシア軍の戦車は、30年前のソ連時代に作られた粗悪品だとか、民需品のスマホを部隊間の通信に使っているためにウクライナ側に情報が漏れているともいわれています。
実態は、多くのマスコミが報道している通りで、納得していないのは私だけかもしれません。しかし、ウクライナの政界が腐敗しているというのは有名な話で、バイデン大統領の息子のハンターはこの腐敗に乗じて荒稼ぎをしていたほどです。だから、ロシア側の腐敗と弱体化だけを指摘するのは納得できません。
今我々が接している報道は、ウクライナと欧米側から発信されている偏ったもので、現実には、我々が知らないことが起きているのかもしれません。何よりも、ロシアの総兵力は90万人もあるのに、その内2割の18万人しか前線に送っていません。
今の南ロシアやウクライナは雪解けシーズンで道路がぬかるみ、軍隊は移動できません。ロシアがウクライナに軍隊を追加投入していないのは、こういう事情ではないでしょうか。ナポレオンのフランス軍もヒトラーのドイツ軍も6月にロシアに攻め込んでいます。この頃までロシア軍が持ちこたえることができれば、ウクライナ戦争の様相も変わるのではないでしょうか。