中国の経済政策には、日本が見習うべき部分もある

中川先生が書いた『巨大中国を動かす紅い方程式 ― モンスター化する9000万人党組織の世界戦略』を読んで、中国の政治体制は社会主義思想に基づくものではなく、中国の伝統的な考え方・制度から発展したものであることが、明らかになりました。

どの民族も、その伝統の枠から出ることが出来ません。これは日本でも中国でも同じです。中国の急激な経済成長をもたらした「強権アナーキー混合経済」は、官と人民との間の騙し合いの伝統から生まれました。

中国が急激な経済成長を遂げたのは、中国共産党が強力に経済活動をリードした結果だ、ということもこの本を読んで分かりました。

中国は法律の適用をわざと甘くして、特定の産業分野にアナーキー状態を作り出し、その中で多くのヴェンチャー企業を競争させ、イノヴェーションを起こさせました。それは政府主導による強力な産業政策です。社会主義経済は、政府が生産計画を作ることですが、中国の場合はこれとは違い、企業がイノヴェーションを起こしやすい経済環境を作ったということです。

ただ中国の産業政策が、法律の適用を甘くしてわざとアナーキーな状態を作り出すという荒っぽいやり方なので、日本のような法治国家で採用することはできません。しかし、強力な産業政策を行ってイノヴェーションを起こすことに成功したことは、日本も見習うべきです。

アメリカ政府は、成長産業には様々な優遇策を施してイノヴェーションを促しています。このようなやり方は決してFreedomに反しません。国家を強く豊かにするために国民に協力を求めるのは、むしろFreedomの考え方そのものなのです。

ところが今の日本では、自由を「勝手気ままに振舞うこと」だと誤解し、これを妨げることは許されないと思い込んでいます。その結果、日本の競争力がどんどん低下しています。20年ぐらい前は、日本の半導体産業は世界一でした。日本を標的にして他国が半導体産業を育成しようとしたのに対し、日本はそのようなことは自由経済に反するとして、この業界を放置しました。

日本人も明治時代はFreedomの考え方を理解していました。日本を豊かにする先端産業に税金と人材を投入して、官営事業を推進しました。これによって、近代的な経営と技術を備えた企業を作り出し、日本の経済が進むべき方向を指し示したのです。

我々は、今の中国を見て、わが身を反省すべきです。今の日本は自由に対して誤解をしています。国民を豊かにする政策に対して国民が協力するのが、本当のFreedomです。

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