中国は人治社会であり、法治社会でもある

多くの日本人は、中国は法治社会ではなく人治社会だ、と思っています。しかし中川先生は、それを否定していて、人治・紀律治・法治の三層構造になっている、と説明しています。この説明の前提として、中国共産党と中華人民共和国との関係を述べなければなりません。

中国を企業に例えると、中国共産党は中共ホールディングスというべき持ち株会社で、その傘下に、中華人民共和国と人民解放軍という二つの事業会社がある、という関係になります。中共ホールディングスは、人事権を握っていて二つの事業会社に人材を派遣し、人事を通じて二つの事業会社を支配しています。

この権力構造を日本にあてはめると、自民党が日本国という国家よりも上位にあるということになります。そして自衛隊は日本国の一部門ではなく、自民党に所属しているので、自民党を守るのが任務だ、ということになります。中国と日本とでは、国家組織の根本がまるで違います。

法律は、国家を統制するために存在します。従って、中国の法律は中国に所属する人民を統治する道具だということになります。そういう意味では、中国は法治国家です。共産党は中国という国家よりも上位にあるので、中国の法律に服しません。共産党員には、原則として法律は適用されません。

共産党員には、法律ではなく紀律を適用します。紀律は、法律と似た部分もありますが、法律より道徳的なものです。中国共産党は、下級・中級の共産党員を紀律という道徳的なルールで縛って、腐敗を防止しようとしています。そして上級の共産党員に対しては、人間関係を利用した人治を適用するわけです。
上級共産党員   ・・・人治
中級・下級共産党員・・・紀律治
党員でない人民  ・・・法治

唐や明などの王朝は、律令という法律によって人民を統治していました。一般人に対しては法治を行っていたわけで、今の中国と同じです。なお、日本は奈良時代に唐の律令を導入して律令制度を作り上げました。

唐王朝や明王朝は、科挙に受かった官に対しては、儒教という道徳を使って統制しようとしました。これは今の紀律治と同じです。そして、重臣たちや属国の君主たちに対しては、人治を行っていました。今の中国が採用している統治システムは、中国の伝統を受け継いだものであって、社会主義思想から導き出されたものではありません。

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