中国は昔からプロパガンダがうまい

中国は、メディアを正式の国家権力として認めています。日本では、「メディアは第四の権力」などと言われていますが、別に正式の国家権力ではありません。メディアはむしろ「反権力」で、中国とはその役割がまるで違います。

中国のメディアは、指導者を礼賛し、中国がいかに素晴らしい国かということを力説しています。それを見た日本人は、「どーせ、プロパガンダでしょ」と感じ、ウソと胡散臭さを感じます。そして中国人も日本人と同じように感じているはずだ、と考えます。

ところが、中国人自身は、日本人のようには感じていない、と中川先生は書いています。多くの中国人が「どーせ、プロパガンダでしょ」と感じているのは事実です。しかし習近平が自信のある態度で微笑んでいる写真を見て、「ああ今日もお国は安泰だべ~」と思う者が多い、ということです。

また、最近のメディアは金をかけてコンテンツを作っているので、それなりに面白いようです。新華社やCCTVの報道に多くの中国人がうんざりしているのであれば、このようなプロパガンダを何十年にわたって続けるはずがありません。

中国は伝統的にプロパガンダの国です。まず、「正史」がそうです。王朝末に内乱が起こり、以前の王朝が倒れて新しい王朝が起こると、新王朝は「正史」を編纂して、前の王朝が倒れて新しい王朝が出来た時の経緯を説明します。前王朝末期の皇帝がいかに愚かだったかを詳細に説明し、その反面新しい王朝の創設者が人格的にも能力的にもいかに素晴らしいかを説明します。「だから、今度出来た王朝は正当で正しいのだ」という結論になるわけです。

外交も宣伝です。歴代の中国皇帝は、外国の君主が朝貢をするのを熱烈歓迎しました。遠い外国の君主がわざわざ、皇帝の徳を慕って使いを派遣してきた、と国内の人民に宣伝できるからです。だから朝貢使が中国の国境に到達すると、皇帝の費用負担で大名行列を行い、国内を巡回させて宣伝に努めます。また朝貢使が持参した土産の数倍の値打ちがある贈り物を渡します。

このように、中国では、伝統的にプロパガンダは重要な政治のツールなのです。今の中国がメディアを権力として公式に認めているのは、社会主義を報じているからではなく、伝統に従っているのです。

「プロパガンダは政治だ」という中国伝統の発想は、パンデミックでもいかんなく発揮されました。2020年1月25日に、共産党は9人からなる国家対策チームを立ち上げました。そのトップは李克強首相で、副チーム長は王滬寧(歴代国家主席の政治参謀)です。他は、国内と外交の宣伝要員が2人、治安対策1人、経済対策1人、事務方2人で、唯一の防疫担当は孫春蘭ですが、彼女は機械工学を学んだのであって、防疫には何の知識もありません。

要するに共産党幹部は、パンデミックをどのように政治的に利用するかが最大の関心事であって、病気を退治するなどという些事は、医者や細菌学者たちが実務で処理する問題なのです。

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