中国人は民主化を望んでいない

今の中国人の目には党の体制はどのように映っているのかという視点がないと、「中国国民は抑圧され弾圧されているので、そのほとんどが民主化を望んでいる」といったトンデモ論を信じかねない。中国の人民は中国的自由を享受している」と、中川先生は言っています。

彼は、「国家の総出力」ということを考えています。アメリカや日本のような自由主義国家では、自由な体制の中で国家の最大出力を狙っているが、国民の自由を制限することで国家の最大出力を狙っているのが中国だ、というわけです。

中国では長いこと皇帝や官僚が政治を取り仕切り、人民はその統制を受けるだけでした。しかし支配者たちも人民も、強力に統制を続けたら革命が起きることを知っていました。だから支配者たちは、様子を見て統制を手加減し、人民の方は「上に政策があれば、下に対策あり」として、統制をうまくすり抜けて個人的な利益を追求していました。この状態は、昔も今も同じです。

鄧小平以来、共産党政府は経済を優先して、育成したい分野では、わざと法の適用を甘くしてアナーキーな状態にし、競争状態を作り出していたのです。法律や行政指導で白黒をつけずにグレーの状態で放置して、一般大衆やヴェンチャー企業の脱法行為を容認し泳がせていました。その結果、中国にスピード感・バイタリティーがある競争社会が生まれたのです。

今、中国の国民は、「自分の住んでいるところから遠いところで人権侵害も汚職もあるかもしれないが、個人レベルで経済的に食えるようになったし、国家はアメリカにチャレンジするほどの科学技術力を持っているし、新しいビジネスチャンスにはお上が華麗に規制を見逃してくれる」と感じています。

今の中国は、経済的にも技術的にも、ものすごい勢いで発展しています。先進国から技術をパクるとか、外国の企業を丸め込んで中国に投資させるとか、そのやり方自体は感心できませんが、とにかくいろいろな方面で急激に改善されつつあることは否定できません。

上記の中川先生の説明でも分かるように、今の中国は革命的な社会主義国家ではなく、構造的には歴代の王朝と同じく保守的です。実際に政府がやっていることは、もともと中国の伝統社会にあったやり方を、欧米の考え方を加味してスマートにしただけのことが多いです。

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