日本やアメリカの常識では、中国は理解できない

中川先生は、今の中国の体制は社会主義ではなく、中国の伝統的な発想を欧米の考え方も取り入れてよりスマートに効率的にしたものだ、ということを明らかにしてくれました。アメリカ人や日本人が見た中国は、しょせんは自分たちの常識や伝統的なものの見方に引きずられたものにすぎません。

中国の国民にとって、今の体制は別に社会主義ではなく、中国の伝統に沿った慣れ親しんだものです。そして、昔に比べたら食えるようになったし、国家はアメリカに対抗するだけの実力を備えている、頼もしいものです。いろいろ強権を発動するので積極的に支持はできないが、政府のやることには消極的に賛成できるのです。

いま中国政府は、AI顔認証システムや社会信用システム(所得や行動などによって個人ごとに信用度合いをランキングして、社会生活で便宜や不便を与えるというもの)を推進しています。治安が良くなるとか、便利になるという面もあるので、ある程度のプライバシーが保護されるのであれば、一般の国民としては反対する理由がありません。

香港問題にしても、中国の国民の意識は、日本やアメリカとは異なります。中国人から見たら、香港は江戸時代の長崎の出島と同じです。かつて香港と本土の経済格差が大きかったときは、金持ちの香港人が貧乏な大陸人を馬鹿にするような雰囲気がありました。また、政治的な自由や民主主義などを香港人が要求しているのは、本土の人には関係がないことで、支持する理由がありません。

近年、深圳や上海など周辺都市が発展して香港が地盤沈下したため、香港人のストレスが溜まっていました。そういう時に、共産党が香港に逃亡犯条例を押し付けたために、香港の不満が噴出して激しいデモが起きました。このデモによって習近平及び共産党のメンツが潰されました。

中国には選挙という国民から正統性を付与される手段がないので、中国人のメンツは我々の「支持率」のようなものだ、と中川先生は言っています。大事なメンツが潰されたので、こうなると共産党は国益を度外視してメンツを守らなければならなくなりました。そして本土の人民は共産党の香港処理を支持しています。

アメリカが強調する人権や民主化は、中国国民にはあまり響かないようです。アメリカはウイグルの人権侵害を言いますが、アメリカはかつて黒人を奴隷にしていました。民主化についても、大統領選挙を巡る騒動を見て、民主化=混乱、と受け取っているようです。

このように、中国人自身が中国に対して考えていることは、日本人やアメリカ人が勝手に推測している事とはかなり違うようです。「そのうちに、中国人自身が民主化を求めて立ち上がる」というのは、妄想だと思った方が良いでしょう。

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