遺伝子工学の発達によって、人類の移動の跡をたどれるようになった

長江流域や日本で稲作が行われていた6000~7000年前、朝鮮半島には人類が住んでいませんでした。その後、周辺からこの半島に人が移住するようになりました。女真人(満州人)、古代支那人、モンゴル人などが、当然ながらやってきたでしょう。

縄文時代の日本人もやってきたらしいです。DNA分析という方法を使えば、この問題を解き明かせるはずです。

DNAに関して少し詳しい話をします。DNAには、母から娘に伝わるDNAと父から息子に伝わるDNAがあります。細胞の核に含まれているDNAは父方と母方の両方の遺伝子が含まれています。しかし古い遺骨からこのDNAを採取することが難しく、最近になってやっとできるようになりました。

一方、細胞のなかにさらにミトコンドリアという小さな不完全な細胞が多数含まれています。ミトコンドリアに含まれているDNAは母親から娘に伝わるのです。ミトコンドリアDNAは比較的容易に採取することができます。

遺伝子工学の初期の段階では、ミトコンドリアDNAの採取しかできず、各民族の血のつながりは母系しかわかりませんでした。しかし最近になって、男系・女系両方の血統が分かるようになったのです。

古代の部族間の戦いでは、勝った方は負けた部族の男を皆殺しにし、女は生かしておいて自分の子供を産ませました。また女は元の地に残しておいて男だけが新たな土地に移住することも多くありました。その場合でも移住地で男たちは現地の女に子供を産ませたわけです。

このような戦争による征服や移住といった事件による血統の大きな変化は、ミトコンドリアDNAの採取だけでは分からなかったのです。細胞核の中の男系のDNAの採取が可能になって初めて、人類がどのように移動してきたのか、というドラマを解き明かすことが出来るようになったのです。

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