1918当時の日本は完全に独立した国家で、欧米列強から露骨に差別されていたわけではありません。それにもかかわらず日本は、新しくできる国際連盟の規約に「人種差別撤廃」を加えることを要求しました。日本がアジアのリーダーだと自負して、このようなことを行ったのです。
日本のこの行動に関して、昭和天皇は「大東亜戦争の遠因である」と考えておられます。私も「日本は余計なことをしてしまった」と、昭和天皇と同じように考えています。
日本が「人種差別撤廃」を要求した時、欧米の白人国家は本当に困りました。キリスト教には人種差別を認める教義がありました。しかし19世紀の間に、西欧でもアメリカでも有色人種を奴隷にすることを法律で禁止していたので、国家として人種差別を認めるわけにはいきませんでした。
しかし欧米の一般の国民はキリスト教を信じていて、人種差別を当然だと考える人の方が反対派よりもはるかに多かったのです。そのような国内の事情を抱えているので、日本の提案に賛成するわけにはいきませんでした。
日本人の多くがキリスト教を信じていたら、阿吽の呼吸で日本を説得することも可能だったでしょうが、キリスト教を信じる日本人は総人口の1%未満なのでそれもできません。
日本が弱小国だったら、欧米諸国は軍事力で恫喝して黙らせたでしょう。しかし日本は強力な近代国家なので、そうするわけにはいきません。実際欧米は、日本にかなりの配慮をしていました。アメリカは19世紀の末には支那人の移民を大虐殺し、その後は移民の受け入れを拒否していました。これができたのも、支那が分裂していて国家が実質的に存在していなかったからです。
しかし日本政府はアメリカに対して移民問題で抗議を続けていたので、アメリカもなかなか移民禁止を打ち出すことができませんでした。アメリカが日本人の移民を本格的に拒否したのは1924年で、日本が「人種差別撤廃」を主張してから6年後でした。
欧米諸国は、日本が人種差別撤廃を主張した時から、日本と議論するのではなく仲間はずれにし、問答無用で日本と距離を置こうとしはじめました。