人間関係を築くのも、創造のひとつ

日本の組織は、官庁も銀行もメーカーも非常に間接人員が多いです。私は若いころ、欧米の組織に比べて何で日本の組織の間接部門にこんなに人が多いのか、分かりませんでした。最近になってやっとわかってきましたが、日本の組織は単に金を稼ぐために多くの他人が集まった人工的な組織ではありません。そうではなく、メンバーの全員が一つの一族を形成している「家」なのです。

組織のメンバー全員が、個人的な利益のためでなく、組織のために気持ちを一つにして働くときに、日本の組織は生き生きとしてきます。従って組織のメンバーは、互いに同じ組織に所属していることを確認する儀式を行わなければなりません。部下の親が亡くなったら、上司である課長や部長は、仕事を中断してでも葬儀に参列します。部長や課長は部下の親戚なのです。

組織の中でこのような人間関係を作ることができたら、仕事をスムーズに進めることができます。他の部門に何かお願いに行ったとき、「よく分からないが、お前の言うことだからやってやるよ」ということがあります。自分が日ごろから組織のためを考えて行動していることを相手が知っているから、自分の言っていることを相手が信用してくれたわけです。これは人間関係の組み合わせを利用して、「相手にこちらの言うことを認めさせる」という新しい価値を作り上げたということです。こんなことをそう簡単にAIができるようになるとも思えません。

組織の中だけでなく組織の外に対しても、人間関係の組み合わせによって新しい価値を創造することができます。自動車などは、どのメーカーの製品も国産である以上大した違いはありません。客がニッサンではなくホンダの車を買ったのは、単にホンダのセールスマンのほうを客が可愛く思ったというだけの理由です。「人から愛される技術」などAIがそう簡単にもてるとも思いません。

このように、創造力とは組み合わせることです。そして人間関係の組み合わせも大きな価値を創造します。AI技術の向上によって人の仕事が奪われるという局面に立っても、人間関係の組み合わせによって生き延びることができるのではないか、と私は思います。

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