アメリカと日本のAIに対する考え方が違い、へたをすると日本の企業がアメリカの巨大IT企業の下請けになるかもしれない、という問題もあります。
グーグル、アップル、アマゾンなどアメリカの巨大IT企業が狙っているのは、ロボットから集めた膨大な顧客情報(ビッグデータ)です。これを解析することによって、消費者の嗜好を知り、その行動を支配できるようになります。彼らは消費者を支配して大きな利益を得ようとしています。
単品のロボットを売るビジネスは、消費者を支配するビジネスに比べれば、規模はかなり小さいはずです。だからアメリカの巨大ITメーカーは、このようなビジネスは日本やドイツのロボットメーカーに任せても良いと考えているようです。
これに対し、日本のロボットメーカーは、ロボット単品を売ることをもっぱら考えているようです。この戦略の違いにより、日本のメーカーがアメリカの巨大IT企業の下請けになる危険があります。
この問題の根っこには、日本の大学教育の問題があります。日本の大学では、AI研究は情報科学系の学科で行い、ロボット研究は機械系の学科で行っています。本来両方が連携して開発を進めるべきなのですが、大学では別々に教育しています。そのためにロボットメーカーで働いている技術者の多くが、AIを良く知らないという現象が起こっています。
日本の学者や経済産業省は、この問題にすでに気がついています。グーグルやアマゾンに対抗できるような政府系のAI研究機関を作り、巻き返しを図らなければなりません。
最後に、AIの技術が向上することによって「様々な職がロボットに奪われ、多くの人間が失業する」という問題が起きます。この問題こそ、多くの人にとって最も切実でそれゆえに感心の高い問題です。この問題については、次回から別途論じます。