マッチポンプ

「コンピュータに搭載されている集積回路(マイクロプロセッサー)の処理能力は、およそ2年ごとに倍増していく」というムーアの法則は経験則なので、実験を繰り返すことで、法則の正しさを統計的に立証しなければなりません。

しかし集中回路の技術革新は継続的に進行中なので、実験によって法則を確かめることができません。集中回路はシリコンの板を土台にしており、それを小型化することによって処理能力を高めてきました。ところがシリコンの物理的な制約からこれ以上の小型化が難しくなっています。そのために近年は、集中回路の能力があまり増加しなくなっています。たしかにガナシア先生が言うとおり、ムーアの法則は誤っている可能性が高いのです。

また、AIは人間が教え込んだルールに従い、その範囲で最も効率的な手段を自ら探し出すのであって、自分で勝手にルールを作り上げることは出来そうもありません。だから、「人間の意思に逆らってAIが人間を滅ぼそうという目的を持つことは、考えにくい」とガナシア先生は、考えています。

「コンピュータの計算能力の飛躍的な増大は今後は期待できないし、AIは人間を攻撃しようという意志を自ら持つことは出来ない。だからAIが人類を滅ぼすことなどありえない」というのが、ガナシア先生の結論です。

IT企業の創業者たちが「AIが人類を滅ぼす」と主張しているのを、ガナシア先生は「マッチポンプ」と批判しています。彼らは、AIの開発を強力に推進しながら、「AIが勝手に進歩し人間をしのぐ能力を持つことを阻止することは、もはや難しくなっている」と言って自分たちの責任を回避しています。そのうえで「我々は人間を守るために最大限の努力をしているから、信用してほしい」と、自分たちは正義の味方だと主張しているのです。

超有名人が正しいのかガナシア先生が正しいのか、素人の私には分からないので、これ以上話を先に進めることはしません。しかし「AIが人類を滅ぼす」説は科学的に証明されていないことを、忘れてはならないと考えます。