オーストラリアのマスコミが中国の工作活動を報道するきっかけになったのが、2017年12月に起きた事件です。黄という中国人が多額の政治献金を使ってオーストラリアの政治家を買収しようとしました。オーストラリアのマスコミがこれを大々的に報じたため、オーストラリア人が中国の工作活動に気づき、ファーウェイの製品を排除し、中国からの投資を厳しく審査するようになりました。
2019年11月に、王立強という27歳の中国のスパイが防諜機関であるオーストラリア保安情報機構(ASIO)に出頭して「自分は中国共産党のスパイである」と身元を明かして保護を求めてきました。
王はASIOの保護と引き換えに、中国の工作活動を詳細に話しました。そしてナインという大手テレビ局の『60ミニッツ』という報道番組に素顔で登場し、中国共産党による買収工作や脅迫行為がどれほど各国に浸透しているかを、実名を挙げて赤裸々に語りました。
王は香港の投資会社である中国創新投資に就職しましたが、実際にはこれは中国人民解放軍直轄のスパイ組織で、会長の向心は中国共産党の上級スパイでした。王は向心の指示に従ってスパイ活動を行いました。
向心はあるテレビ局に命じて、法輪功や香港民主派組織に様々な嫌がらせをさせましたが、このテレビ局の幹部二人は、本当は解放軍の少将と大佐でした。このテレビ局は、工作費として約8億円の資金を中国共産党から得ていました。
2015年に、香港で「銅鑼湾書店事件」という有名な事件が起きました。この書店は中国共産党に批判的な書籍を扱っていました。この書店が「習近平と愛人たち」という本を販売したことが共産党の逆鱗に触れ、店長以下5人の関係者が相次いで失踪しました。王は店長を拉致する実行部隊に上部の指示を伝えた、と告白しています。
中国共産党は、学生に対する宣伝活動にも力を入れていました。王は大学のキャンパスに入り込んで、学生たちを手先にして、民主派学生の間に紛れ込ませ、そのリーダーの個人情報や家族関係などの情報を集めていました。そしてインターネット上で個人攻撃をして、それ以降の活動が出来ないようにしていました。