神様と民との間の仲介者は特定の家系の者しか務まらない、という考え方は日本人だけでなく、他の民族にもあります。そのよい例が、イエス・キリストです。イエス・キリストは神の言葉を人間に伝えるために、人間界にやってきました。即ち彼は預言者であり、天皇と同じ役割を持っていました。
新約聖書は、『マタイによる福音書』から始まります。そしてその第一章は「アブラハムの子であるダビデの子、イエス・キリストの系図」です。すなわち新約聖書は、イエス・キリストの家系の説明から始まるのです。アブラハムはイサクの父であり、イサクはヤコブの父 ・・・
①アブラハム - ②イサク - ③ヤコブ - ④ユダ ・・・ ⑭ダビデ王
②ダビデ王 - ②ソロモン - ③レハベアム ・・・ ㉗ヨセフ - ㉘イエス
アブラハムはユダヤ民族の始祖で、日本で言えば天照大神にあたるでしょう。その14代目の子孫がダビデ王で、日本で言えば神武天皇にあたります。ダビデ王の28代目の子孫がイエス・キリストだ、と新約聖書は説明しています。
イエス・キリストはアブラハム及びダビデ王の家系に属する子孫だから、神の言葉を人間に伝える役割を果たすことが出来るのだ、と新約聖書が言っているわけです。これは、天照大神及び神武天皇の子孫しか天皇の勤めを果たせない、というのと同じ考え方です。
天皇が代替わりするごとに、大嘗祭という儀式を行います。この儀式の内容は古くから秘密にされているので、詳しいことは分かっていません。しかし折口信夫などの学者が調べた結果、おおよそ下記のような内容であることが分かってきました。
天皇の魂には「天皇霊」が付着していると考えられています。「天皇霊」とは、天照大神以後の歴代の天皇の魂が凝縮したものです。これが送受信機の役割を果たすので、天皇は天照大神や先祖とコミュニケーションができるのです。そして大嘗祭で、先代の天皇から新しく即位した天皇がこの天皇霊を受け継ぐのです。
天皇がその役割を果たすためには、天照大神や神武天皇から続く家系に属しているということの他に、天皇霊をその魂に付着させていることも欠かせない条件なのです。天皇家とは家系が異なる女系天皇は、このどちらの条件も備えていません。
天皇が神と日本人との間の仲介者だということを信じられない者は、天皇の存在自体を否定せざるを得ません。しかし、天皇の存在を肯定する以上は、女系天皇を認めることはできません。女系天皇肯定論は、理屈が通らないのです。
国民が天皇を敬愛しているから天皇の存在は必要だ、と主張する者がいますが、これも理屈が通りません。天皇が神と日本人との間の仲介者だと認めるならば、国民が天皇を敬愛しなくても天皇は存在すべきなのです。
神道は、天皇が神と国民との間の仲介者であり、その繁栄と安全を絶えず神に祈っているとしています。そして神道の信仰から誠の考えが生まれました。誠は日本の繁栄に絶対に必要です。従って私は、神道の信仰は守るべきであり、神道と一体化している天皇をも守るべきだ、と考えています。