ノブレス・オブリージュという不文律

眞子内親王殿下と小室圭氏との結婚に多くの人が否定的ですが、その理由みな同じで、「高貴な身分の者は国民の模範とならなければならない。庶民では許されても、皇族では許されないことがある」ということです。このような社会的な不文律は、多くの民族が持っており、日本も例外ではありません。

西欧では、この不文律を「ノブレス・オブリージュ」というフランス語を使って表現しています。さして古い言葉ではなく、19世紀に入って初めてフランスで使われ、西欧中に広まっていきました。19世紀の西欧は革命が起きて、Freedom(自由)とEquality(平等)が憲法で規定され、誰でもこの権利を主張できるようになりました。「ノブレス・オブリージュ」は、FreedomやEqualityが誤解されないように、その意味を補足説明しています。

キリスト教は神が人間を作ったと考えます。全く同じ人間を量産したのではなく、それぞれの人間に異なる使命を与え、それを達成するために必要な能力や権限をも与えたということです。つまりキリスト教は、人間は基本的に不平等に作られていると考えているのです。神から授けられた使命と無関係な一般的な社会生活に限ってのみ、同じように扱われるべきだ、というのがEqualityの考え方です。

軍艦の艦長も水兵も任務が終われば、陸で平等に休暇を楽しむことができます。しかし海の上で作戦中は、艦長は絶大な権限をとっており、食事や住居などは優遇されます。その反面、戦闘で軍艦が沈没する際、水兵は船から逃げて生き永らえる権利がありますが、艦長は船と運命を共にしなければなりません。このように、平等な側面と不平等な側面を合わせた考え方が、FreedomやEqualityです。そして高貴な者には特別の義務がある、という部分をノブレス・オブリージュと呼んでいます。

「ノブレス・オブリージュ」は結婚の際にも適用されます。戦前日本の皇族・華族や一定の階級以上の軍人は、天皇陛下の許可がなければ結婚できませんでした。イギリスでは今でも一定範囲の王族は女王の許可がなければ結婚できません。オランダでは、王族の結婚には議会の承認が必要です。仮想敵国の国民との結婚や王室の権威を傷つける者との結婚を防ぐためです。

敗戦後の日本では、女子の皇族の結婚を制限する法律がなくなってしまいました。今の皇室典範は、女子の皇族の範囲を定めているだけで、結婚の可否に関する規定はありません。一方、日本国憲法24条は、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する」と規定しています。だから、長女の眞子内親王殿下からその条文を持ち出されると、父親の秋篠宮皇嗣殿下も対抗できないわけです。

こういう状況から、伊吹元衆議院議長は、「皇族は日本国民ではないから、憲法の条文は適用されない」と少し無理な議論をせざるを得なかったのです。皇室典範を改正して、女性皇族の結婚にも皇室会議の承認を要するようにすべきです。

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