天皇は神と民との仲介者

西欧の諸王家は、一応は男性を優先していましたが、直系の男子が絶えれば、女系王も認めていました。例えば、イギリスの場合、近代になってからでも、チューダー王朝 → スチュアート王朝 → ウィンザー王朝と王朝が交代しています。

エリザベス二世はウィンザーの家系ですが、その夫のエディンバラ公爵はマウントバッテンの家系です。従ってエリザベス二世の長男であるチャールズ王太子が即位したらまた王朝交代が起こり、マウントバッテン王朝になります。

2013年にイギリスは王位継承法を改正して男女の区別を廃止し、男女に限らず長子が王位を継承することになりました。

日本の女系天皇容認論者は、西欧の多くの王家で女系を認めていることを引き合いに出しています。しかし西欧の王と日本の天皇はその役割が全く違うので、参考にするべきではありません。

西欧の国王は、神様によって「お前は国王になって国を統治せよ」と指名された人間です。だから戴冠式では、ローマ教皇などの高位の神父が神の代理人として国王の頭に王冠を載せます。神様はそれぞれの人間に個別の使命を授けます。ある者は床屋になる使命を授けられ、ある者は百姓になるように命令されました。

それと同じようにある者は、国王になる使命を神から授かったのです。特定の家系の者がどうしても国王にならなければならないということではありません。国王の息子の方が教育や人間関係に恵まれているから統治に都合が良いと、神様が判断することが多い、というだけのことです。

一方、天皇は神様と国民の間の仲介者です。神様から日本国民に対するメッセージや指示を受信してそれを国民に伝え、また日本国民の祈りを神様に届けるのも役目です。この役目を霊媒と理解しても良いし、神主や預言者と思っても構いません。「送受信機」と考えることも可能です。

天皇を「すめらみこと」とも言いますが、「すめら」は「澄めら」らしいのです。穢れた国土や民を神に祈って祓い清らかにするのが天皇の役目だったと考えられます。やはり天皇は、神様と民のとの間の仲介者なのです。

このような神様と民とを仲介することは、天皇家の家系に属する者しかできない、と古代から日本人は考えていました。

天皇の娘も天皇の家系に属しているので、仲介者になることができます。だから昔から天皇の娘が天皇になることはありました。しかし天皇の娘が他の家系の者と結婚してできた子供は、別の家系なので仲介者は務まらない、と昔から考えられているのです。

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