BISという民間銀行が出した基準に日本の銀行はおとなしく従い、企業から融資した資金を無理やりに取り戻し始めました。いわゆる「貸しはがし」です。これによって資金繰りが行き詰った多くの企業が倒産しました。
バブルが崩壊し、銀行が貸した金の担保にとった株価や地価が下がって貸付額を下回ったため、日本の銀行の不良債権が増加しました。このような場合、銀行は不良債権額を損金処理するのが鉄則です。一時的に銀行の決算が大赤字になりますが、経営の実態を正確に数字化でき、その後は銀行と借り手企業の両方の経営が合理的になります。
銀行や借り手の企業の経営者は、正しい会計処理をして経営の実態をさらけ出したら責任を追及されるので、これを嫌がりました。そこを政府や大蔵省が断固として行わせるべきでしたが、残念なことに粉飾決算を認めてしまいました。その結果、合理的な経営が出来ずに不良債権がどんどん膨らんでしまいました。政府・大蔵省はまたミスを犯したのです。
銀行の不良債権が増えて正常な経営が成り立たなくなれば、銀行を潰すのが本筋ですが、銀行が潰れると日本経済に大きな悪影響を及ぼすので、公的資金を投入して銀行業を続けさせるのも、一つの判断です。
政府は結局、公的資金を投入して銀行を潰さない方針に決めました。銀行に粉飾決算を許したまま公的資金を投入し続けたので、最終的に銀行に投入した公的資金が100兆円にまでなりました。
1995年に政府は方針転換をし、これ以上公的資金を銀行に投入するのをやめました。その結果、1997年から翌年にかけて大銀行などの倒産が相次ぎました。北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、山一證券、三洋証券などです。政府は途中で方針変更をするぐらいなら、最初から銀行を破たんさせるべきでした。その時は、公的資金の投入は十分の一ぐらいで済み、日本の銀行は体力を消耗しないで済んだはずです。政府・大蔵省はまた判断ミスをしました。
銀行が貸しはがしというとんでもないことをしたこと、及び銀行の体力が弱まり頼りがいがなくなったことなどから、日本の企業は銀行を信用しなくなりました。