大蔵省や日銀の役目は、日本経済が順調に成長して日本人が豊かな生活を楽しめるようにすることのはずです。ところがバブル末期に、彼らはまったく違うことを考えていました。
当時、株や不動産の価格が暴騰しましたが、それは証券会社・不動産屋・やくざが法の規制をかいくぐり不正な取引をやっていたからなのです。そして株や不動産を所有している者と持たない者との間の経済的格差が広がっていました。
このような状況を見た大蔵省や日銀は、格差の是正を行おうとしました。その際、彼らがすべきは、法を厳格に執行して不正な取引を取り締まることだったはずです。そうすれば、株や不動産の価格は妥当な水準に落ち着くはずでした。
ところが大蔵省や日銀の役人たちは、法の厳格な執行という自分たちのなすべきことをせず、株や不動産の価格を無理やり下げて、経済格差を縮小しようとしました。大蔵省の土田正顕銀行局長は銀行に指示して、不動産向けの融資を制限しました。また三重野康日銀総裁は、金利を上げて日本の経済活動に水を差そうとしたのです。
生活困窮者に対して、失業手当を支給し生活保護を行うというのは、役人たちの権限内でできることです。しかし、その範囲を超えて、日本経済を不況にし資産価格を無理やりに引き下げて「格差是正」をすることは、役人たちの権限を越えており、単なる行政機関のすべきことではありません。
日本人の間の格差是正は、日本の社会全体で考えるべき問題であり、また日本の伝統的な考え方に深くかかわっています。少なくとも高度に政治的な問題であって、役人ごときが勝手にすべきことではありません。
大蔵省局長や日銀総裁がこのように権限を逸脱した行為をする際に、このような処置によって日本が不況になることについては、大して考慮した様子がありません。「君たちは何様のつもりなのだ」という思いを私は抱きました。
株や不動産は個人財産です。それを行政が無理やり価格を引き下げるのは、私有財産の侵害に当たります。このようなことをアメリカでやれば、役人の首が飛ぶだけでなく、裁判で有罪になると思います。