東京都武蔵野市が住民投票条例を制定しようとしましたが、これは外国人にも実質的な参政権を与えるもので、外国人の投票権を否定する憲法や最高裁判決に反する疑いが極めて高いものです。このことは以前にも説明しました。
日本の選挙制度は、一般の国民は選挙によって国会議員や地方議員・首長を選び、彼らに具体的な政治を委ねるというやり方が基本で、それを補充する形で住民投票という制度があります。住民投票は、「直接民主制」なので、学校では民主主義の理想の姿だと教わりました。古代アテネの直接民主制も、すぐに衆愚制になりました。
あらゆる制度は、運用次第で良くも悪くもなり、絶対に正しい制度はありません。日本の地方自治体が行う住民投票には、左翼勢力が「プロ市民(左翼活動家)」を動員して実質的にその自治体を乗っ取ろうとすることが多く見受けられます。今回はこの話をしようと思います。
武蔵野市の住民投票条例は、いまは住民投票を必要とする案件がないにもかかわらず、住民投票制度をあらかじめ作っておいて、市政を乗っ取るチャンスが来たらそれを活用しようとするものです。その乗っ取りの際に、日本人のプロ市民だけでなく外国人も利用しようということです。
埼玉県北本市で実際に起きた事件を、お話しします。これは村田春樹先生が書いた『ちょっと待て、自治基本条例』という本の中で紹介されていました。
北本市は埼玉県の大宮市の北にあり、JR高崎線で上野まで50分と東京通勤圏で、典型的なベットタウンです(人口6万6千人)。市の北部に「北本駅」があるだけで、上りの次の駅は5キロ南の「桶川駅」でした。「市内にもう一つ駅が欲しい」というのが、北本市民の願いだったのです。
1986年 市議会は全会一致で「新駅請願」を採択し、国鉄に対し新駅誘致を始めた2009年 市議会は「新駅設置促進決議」を全会一致で採決
2012年4月 石津健治市長が「新駅設置」を公約に掲げて市長三選
2013年7月 JR東日本から回答。新駅建設費用全額の72億円の負担を市に要求
・ 9月 新駅誘致について住民投票条例を可決
・ 12月 住民投票実施 賛成8353票、反対26804票で、反対派が勝利
・ 石津市長はJRに対し、新駅要請撤回を通告
市会議員たちは全員が新駅設置に賛成していました。だから石津市長が議会に72億円の支出を要請すれば、すんなりと決まるはずでした。72億円の支出を決める権限は、市議会にあったのです。ところが石津市長は、住民投票の実施を主張しました。住民投票をしても勝つに決まっているから、勝ってその余勢を駆って一年半後の市長選挙で四選を果たそうと考えたからです。
ところが、住民投票をやってみたら、その反対の結果がでてしまいました。