欧米は私権を大胆に制限する

ジョン・スチュアート・ミルが書いた『On Liberty』は、「Freedomはキリスト教の教義が基礎になっており、キリスト教の知識がなければきちんと理解することはできない」という重要なポイントがこの本には欠けています。しかし、それ以外はFreedomの意味をきちんと説明しています。また、この本は明治初期の日本に大きな影響を与え、「富国強兵」政策に理論的根拠を提供しました。

このようなわけで、『On liberty』をもう一度読み直した上で、Freedomがどういう考え方なのかを説明し、Freedomと「自由」はかなり内容が違うということを説明します。これが分かれば、欧米緒国はFreedomを原則としているのに、私権をかなり制限している、ということが納得できるようになります。

この本の冒頭に、「国家や社会は、個人に対して権力を行使できる。ただしそれには限界がある。」と書いています。Freedomは、国家や社会が個人に権力を行使することを認めているのです。

Freedomにこのような発想があるとは、一般の日本人には意外だと思います。日本人は「自由とは、勝手気ままに振舞うことであって、権力の命令をはねつけることだ」と思い込んでいるからです。

「古い時代の自由とは、支配者が国民に対して行使する権力を制限することだったが、そんな時代は終わった。一時的な支配者を選挙で選ぶようになったからだ」と、ジョン・スチュアート・ミルは、書いています。

今(19世紀後半)は「多数派の専制」という新しい問題が生じているから、多数派が、考え方が異なる人間に自分たちの考え方を押し付けるようなことに対して防御策が必要だ、ということをミルは主張しています。

この防御策とはFreedomの考え方を徹底することであり、その原理は極めてシンプルだ、というのです。

  • 社会が個人に強制できるのは、他人に危害が及ぶのを防止する時だけである
  • 相手にとって良いことだ、という理由で強制することは許されない
  • 個人の行動のうち、社会に対して責任を負わなければならないのは、他人に関する部分だけである

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