当初は、女性の参加が認められなかった

森氏の発言が辞任騒動になった原因は、直接的には「オリンピック憲章」にあります。オリンピック憲章の第一章「オリンピック・ムーブメント」の中に「IOCの使命と役割」という条項があって、「男女平等(equality of men and women)の原則を実践するため、あらゆるレベルと組織において、スポーツにおける女性の地位向上を促進し支援する」と書かれています。

3000年ぐらい前からあった古代ギリシャのオリンピックは、選手も観客も男性に限定されていました。近代オリンピックは、1896年に第一回目がギリシャのアテネで行われましたが、この時も選手は男性に限定されていました。女性の選手も認めよという要求が出てきたため、1908年の第四回ロンドン大会から、女性の選手が公式に認められました。

その後も女性の競技種目数と選手数を男性と同じにする努力が継続されてきました。IOCのオリンピック憲章の趣旨に沿って、文部科学省がJOCの理事についても4割は女性にせよと山下会長に指示したわけです。山下氏がそれを実現できないので、森氏が横から彼を弁護したわけです。つまり森氏は、男女の数の話をしたのです。

これに対して、朝日新聞は「女性蔑視発言だ」として猛烈に批判して、最初に「五輪の開催に決定的なマイナスイメージを植え付ける暴言・妄言だ。すみやかな辞任を求める」とした上で、「森氏はきのう会見し、反差別や男女平等原則の完全実施を目指す五輪精神に反するものだったと謝罪した」と報道しました。

私は、4日の謝罪会見の動画を見ました。森氏は男女平等原則を定めた五輪精神に反するとして謝罪をしていましたが、「反差別」という発言はありませんでした。朝日新聞は「反差別」という言葉を使って謝罪したように書いていますが、これは誤りです。「差別」というのは数の話ではなく、質の話です。

そして、「出席していたJOCの評議員からは笑いが起き、たしなめる動きは一切なかった」とも朝日新聞は書いています。森氏はその場にいた多くの人を笑わせようとしたのだから、みな笑ったのは当然です。その中には女性もいたはずで、彼女らも笑ったのです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする