中小企業を保護するのが、自由主義経済

アトキンソンは、最低賃金を上げることによって中小企業の数を減らせ、と主張しています。このようなショック療法を施すと、中小企業の経営者は労働者にもっと高いレベルの仕事をさせるように努力する。さらに企業統合を行って規模を大きくし、生産性を向上させる。従って最低賃金を上げても失業者や企業倒産は増えない、とアトキンソンは、イギリスの過去の実績を例に出して説明しています。

たしかに最低賃金を上げる政策は、景気が悪くない時は効果を期待できます。しかし、デフレで需要が伸びない時は、中小企業は賃金上昇に耐えきれずに従業員を解雇し、最悪では倒産をしてしまいます。近年では韓国の文在寅政権は、不況なのにもかかわらず最低賃金を大幅に上げて、失業者と企業倒産を増やしました。今の日本の現状で最低賃金を上げるのは、リスクが大きいです。しかしそれでも最低賃金の大幅値上げを主張するのは、中小企業の存在を評価していない、ということになります。

しかし、このような考え方は、Economic Freedom(経済的自由)に反します。Freedomは成熟して正しい判断ができる大人に対しては、その自主的な判断を尊重します。しかし、子供や未開人は正しい判断が出来ないので、強制的に教育して、正しい判断ができるように育てます。競争させるのは、あくまで成熟した大人だけです。

中小企業は、いわばこれから教育して育てるべき子供です。だからまともな国では、中小企業に対して税金を軽減したり補助金などを支出して育てるのです。だから最低賃金を上げて、これに対応できない中小企業が倒産するのを放置することは、インフルエンザにかかって熱を出している子供を治療しないで放置するようなものです。

Freedomなどという大層な考え方を持ち出すまでもなく、子供を保護して一人前に育て上げるというのは、人間の自然の感情です。アトキンソンはこのような自然なバランスのとれた考え方ができないのでしょうか。

日本もかつては、幼稚な産業を保護して一人前に育てるというEconomic Freedomの経済政策をやっていました。明治初期の政府が行った「官営事業」です。日本政府は外国人技術者を高給で雇い、巨額の税金を投入して八幡製鉄所・富岡製糸工場などの国営企業を育てました。

この政策は、日本政府が国内に独占企業を作り、自由な競争を阻害したように見えます。国際的にみても、自国産業を保護して外国企業との公正な競争を妨害しているように見えます。しかし欧米列強はこの政策に反対せず、むしろ優秀な人材を日本に派遣するなど、積極的に支援しました。それは、産業が未熟な日本がこれから成長しようとするのは、Freedomの考え方に合致すると考えたからです。

これからも分かるようにこれから大きく育つことを期待されている中小企業に対する保護を止めるというアトキンソンの考え方は、Liberal economy(自由主義経済)に反します。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする