大蔵省の官僚が「ノーパンしゃぶしゃぶ」事件などのスキャンダルを起こしたため、その強大な官庁を弱体化しようとして、財務省に組織替えが行われました。その時に(平成11年、1999年)に財務省設置法が制定され、財務省は「健全な財政の確保」をしなければならなくなりました。
法律を制定する目的は、「国益を図るため」とするのが一般的です。何が国益かはその時々で変化するので、特定の政策を採ることを明記するような法律は異例です。なぜ「健全な財政の確保(税収の範囲内で支出を行うという意味)」と規定した法が制定されたのかはよくわかりませんが、形式的には財務省の消費税増税の方針はここから来ています。
財務省が設置された平成11年の国の借金は三百数十兆円で、今の三分の一です。財務省は20年にわたって「健全な財政の確保」という任務を破り続けてきたので、この規定が破たんしていることは明らかです。それでもなお財務省が「健全な財政」にこだわるのは、別の理由があるはずです。
小泉政権の時に経済財政政策担当を務めた(2001年~2005年)慶応大学名誉教授の竹中平蔵先生は、次のように言っています。
「日本経済はこれ以上の成長を望めないし、望まなくてもいい、なんてことを言う人、けっこういるみたいですね。僕には、とても不思議なことを言っているように聞こえるけれど・・・」
藤井聡京都大学教授(社会工学)は安倍内閣の官房参与をして政治家や官僚たちの意見を聞いてきた先生で、今度の消費税増税には断固反対の立場ですが、彼は次のように語っています。
「今の経済の中で、政府の役割は非常に大きくなっている。国民が経済政策の方針を決めてそれを政府に実施させれば、国の経済状態を変えることができる。ところが、経済は自然現象だから人間が統制できないものだ、と考える者が増えている。そういう者たちは、国が借金をして需要を作り出し景気を好転させれば、インフレが止まらなくなってしまうと主張して、消費税増税に反対している」
竹中教授と藤井教授が共通して持っている感想は、「日本人は、経済は自然現象だから人間の意識によって変えようとしてはならない、と考えるようになった」ということです。