アメリカは、予定説によって奴隷制を維持した

キリスト教は、「人間がイエス・キリストを信じれば、イエス・キリストがその人間を神様に推薦する。そうしたら神様はその人間に神様の魂を分け与える。その結果、その人間の心が正しくなって助け合う仲間ができ、幸せになれる」と教えます。

つまり、イエス・キリストを信じなければ心が正しくなることはなく、野蛮人のままなのです。だから西欧人は、南米や北米の原住民が異教徒だったので「野蛮人だ」と考え、平気で大虐殺しました。

さらにアフリカから黒人奴隷を連れてきて、アメリカでこき使いました。アフリカから連れてきた時は、黒人たちはイエス・キリストを信じていない異教徒でした。しかしアメリカで奴隷生活をしているうちに、多くがキリスト教に改宗しました。

では白人たちは、「黒人たちもイエス・キリストを信じるようになったから、心が正しくなった。だから彼らを奴隷から解放しよう」と考えたでしょうか。そういう白人もごく少数はいましたが、大多数は黒人を奴隷のままにしておきました。

白人たちは、キリスト教に改宗した黒人たちを「神は黒人を、イエス・キリストを心の底から信じることができない劣った人種として作った。その結果、黒人は本物のキリスト教徒になることはできない。従って、彼らがたとえ洗礼を受けたとしても、彼らの心は依然として邪悪であり、イエス・キリストと同じ正しいものとは言えない」、と考えました。

神様が人間を作るとき、性格や能力・環境などその人間に関するあらゆることを「予め」「定めて」おきます。これが「予定説」の考え方です。予定説によって、キリスト教は人種差別を支える宗教になりました。予定説は主としてプロテスタントによって唱えられ、カトリックはあまり強調しませんでした。

19世紀に入って西欧が黒人の奴隷制度を廃止するようになったのは、カトリックの勢力がかなり強かったためでした。また啓蒙思想の広がりによってキリスト教の勢力がやや衰えたことも、原因でした。

アメリカではプロテスタントの影響力が圧倒的に強かったので、黒人奴隷制度がずっと維持されたわけです。

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