アメリカでは、今でも人種差別がある

「神様は、その人間が生まれる前に、予めあらゆることをお決めになっていた」というのが予定説です。その人間が、強盗によってピストルで撃ち殺されたとしても、女性が離婚して母子家庭になってしまい経済的にさんざん苦労したとしても、全て神様が予定しておいたのです。

神様がその人間を経済的に苦労させようと考えていたのなら、その人間はどんなに努力しても金持ちになることはできません。予定説というのは、なんとも理不尽な教義です。キリスト教の勢力が少し弱くなった19世紀の西欧では、「こんな恐ろしい神様は嫌いだ」と公言する人まで出てきました。

ほとんどの日本人は、予定説にはついていけないと思います。しかしこのような説が信じられていたのは、史的事実なのです。そして今でも少なからぬアメリカ人が信じています。

予定説を信じるアメリカの白人たちは、「神は黒人たちを、イエス・キリストを心の底から信じることができない人間として作った。だから彼らが表面上は洗礼を受けキリスト教徒になったとしても、その心は正しくなく、野蛮である」と考えました。

予定説に納得せず、黒人もイエス・キリストを信じることができると考えた人は、黒人奴隷制度に反対しました。南北戦争というのは、キリスト教の視点から見ると、予定説と反予定説との間の戦いなのです。

プロテスタントの中にメソジストというアメリカ最大の宗派があります。予定説をとっていましたが、南北戦争の前に南北に分裂しました。北部メソジスト派は、予定説を否定し、黒人奴隷制度に反対しました。

南北戦争で北軍が勝ち奴隷制度が廃止されたために、予定説は打撃を受けましたが、消滅したわけではありません。南北戦争後も人種差別はなくならずに今でも続いています。ニューヨークやロサンジェルスのような大都会では、日本人は露骨な差別を受けることはあまりありませんが、一歩田舎に足を踏み入れると、非常に不愉快な目に遭います。

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