ローマ国籍があこがれの的になった

古代ローマの国籍を持っていても、実質的なメリットはあまりないという状態が長く続きました。ところがBC107年にローマで徴兵制が廃止されて志願兵を募集するようになり、行きたくなければローマ人も兵隊にならずにすむようになりました。

このころローマの社会は貧富の格差が広がり、土地を手放した多くの農民が都市に出てきて失業者になってしまいました。彼らもローマ人であり参政権を持っているので、不満を解消しなければ大変なことになります。

そこでコロセウム(競技場)で、剣闘士どうしや剣闘士と野獣が戦うショーを無料で開催したり、貧しいローマ人には無料で小麦粉を支給したりしました。遊民化したローマ人とその家族が30万人ぐらいになり、大きな社会問題になったので、その有効活用策として、兵士にすることにしたわけです。

ローマの国籍を持っていると、兵隊にならなくてもよく属州税を支払わなくても良いうえに、帝国のどこにいても、ローマ法により手厚く保護されました。例えば、地方の官憲に不当な扱いを受けたと思ったらローマ政府に直訴する権利があったので、誰もがローマ国籍保持者を丁重に扱いました。

このようなわけで、ローマ国籍を持っていると非常に有利になったのです。そうなるとイタリア半島内のローマの同盟国の国民が不満を持ってきました。彼らは言葉も習慣もローマ人と似ており、古くからローマ人と行動を共にしてきました。

ところが自分たちの仲間だと思っていたローマ人に差をつけられたので、自分たちにもローマ国籍を付与せよ、と要求して反乱を起こしました。そこでローマ政府は、イタリア半島に住む自由民全員にローマ国籍を与えて、反乱を鎮めました(BC90年)。

結局、イタリア半島に住むすべての自由民はローマ国籍を持って優位な立場にあり、それ以外の属州の自由民は属州税を払い続けるという不平等な扱いを受けました。この状態が300年間続き、その間ローマは繁栄を謳歌しました。

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