ローマ国籍を得た者は、立派な人になろうとした

属州民にとってローマ国籍はあこがれの的で、様々な手段でこれを取得しようとしました。軍隊に志願して(正規軍にはローマ人しか入れないので、補助部隊に入った)25年間軍務を勤め上げ退役の時にローマ国籍を付与されるとか、医者や教師になれば国籍を取得できるなどの方法があったのです。

努力して得た国籍なので愛着も大きく、彼らはローマに忠誠心を持ち、国民としての義務を一生懸命に果たそうとしました。

ローマ人には遺言書を書いて、親族以外の者にも遺産を相続させる習慣がありました。見どころのある人物に応援しようという習慣があったのです。財産を築いたアメリカ人が大学などに多額の寄付をするのは、この習慣を見習っているのかもしれません。余談かもしれませんが、今のアメリカを観察していると、いろいろなところで古代ローマを見習っているのを感じます。

血縁者が相続する場合は無税でしたが、そうでない場合は5%の相続税が課せられました。ローマ人は身内の利害関係ばかりを考えるのではなく、社会に奉仕するという考えが非常に強かったので、余計な税金を払ってまでローマ人としての道義的責任を果たそうとしたのです。

また、長年仕えてきた奴隷を解放するということも盛んにおこなわれていました。「解放奴隷」という階級がローマ社会にあったほどです。その時にも主人は5%の税金を払わなければなりませんでした。ローマ人は、永年の労苦に報いるという道義を果たすために、「奴隷解放税」まで払ったのです。

このようにローマ人は、社会に奉仕をしようという気持ちを強く持っており、これがローマを大帝国に押し上げたのです。努力してローマ国籍を取得した者たちも、このような伝統を自分の守ることによって、エリート集団であるローマ人の仲間入りをしようとしたのです。

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